「新興国パワー1」 – ワインとカジノ(1) –

 プリムール・ワインという言葉をご存知でしょうか?

 いわゆるワインの先物買いです。ボージョレ・ヌーボーは採れたての新鮮な果実酒を楽しむもので、プリムールは出荷前の買い付けです。

 ボージョレ・ヌーボーが採りたてだとすると、一般のワインは半年後の翌年の春、そしてボルドーのプリムール・ワインは2年後ぐらいまで寝かせてから出荷されます。高級ワインは熟成と共に値段が上がりますから、先物買いをしておくと、割安に高級ワインが飲めます。投資対象にしている業者や人も存在します。

 私も約3年前に、ボルドーの五大シャトーワインを予約しました。契約書を交わし、ずっと待っています。しかし未だに届きません。2年間で出荷されるのが標準ですから、最初の予定では昨年2010年の11月に配送される予定でした。その後、予定が延びて2011年3月になったとの連絡が入ります。仕方なく待っておりましたが、7月になっても届きません。さすがにクレームを入れると、8月配送との返答がありました。

 遅延理由は、「新興国優先」ということで、お金に糸目をつけない新興国パワーに負けています。先物買いで、騙されている可能性もありますが、現実、日本は世界の中から無視される状態になりつつあります。オーストラリアの日本語ブームは去り、大学で教える外国語は日本語から中国語に主軸が変わりました。貿易政策や企業も、やはり中国の方が重要なお客様になりつつあります。
 「日本企業は値切りばかり言ってくるが、他のアジアの国は、とにかく物があれば売って欲しいという態度である」といったコメントも最近、聞きました。日本を通り過ぎることがパターン化しており、とても危機感を感じます。

 P.S.
 プレムール・ワイン、3年前に購入した金額の3倍になっています。(到着しなければ、馬鹿をみますが)
確かに確実な投資と思いました。元々、五大シャトーのワインは価格が高く、自分では購入しにくいので、安く購入できる方法を調べた結果ですが、今の価格だととても買えません。
 ちなみに、毎年テーマの絵が変わるこの銘柄、この年は新興パワーを感じさせる中国の画家が描いています。どの分野でも、新興国パワーは凄い!

「口コミの威力」 – ソーシャルネットワークのパワー –

 3月11日の大地震、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 強烈な地震でした。私自身は、会社のオフィスでミーティング中でした。揺れでホワイトボードに文字を書くことができず、「これはダメだ」とミーティングを諦めて、同僚と揺れが収まるのを待ちました。ほとんどの人が同じような経験をされたと思いますが、携帯電話の通話は直ぐに通じなくなり、携帯メールも不安定で、届くまで2-3時間の時差がありました。

 一方、インターネットは問題なく稼動しており、非常に安定していました。Webと言われるように、くもの巣状に張り巡らされたインターネットは、一部の回線が不通でも影響を受けません。ニュースも素早く配信されるので、刻一刻変わる状況がわかります。

 電子メールは、コミュニケーション手段として、欠かせない生活の一部となりましたが、今回さらにそのパワーを感じさせたのがソーシャルネットワークです。メールはある意味、クローズな世界ですが、ソーシャルネットワークはコミュニティにおける情報共有。状況がどんどん変わる中、パブリックではないが、コミュニティという限定された社会の中でコミュニケーションが成立し、情報が波及していくスピードに驚かされました。

 こちら側が積極的に進めているわけではないにもかかわらず、週に何通かは届くFacebook等の「お友達リクエスト」、コミュニティ自身もどんどん増殖していきます。

 ウィキリークスは内部情報を暴露し、政府を震撼させました。それがソーシャルネットワークでさらに広がって、チュニジアを始めとする革命活動に繋がっていきました。

 最近の飲食店、口コミの評判を見る人が増えています。私も内視鏡検査を受けようと、病院の予約を昨日行いましたが、名医口コミ、参考になりました。六本木の有名な牛たんのレストラン、口コミを見て、直ぐに別の店を探すことにしました。このように情報は、人々の行動に影響を与えていきます。もうこのパワーは無視できない流れです。

 今後は、この情報の精度、信憑性をどのように担保していくかが重要なテーマになってくると思います。デマもあれば、自分で風評を流す人も出てきます。インターネット出現前から問われてきた「メディア」の存在意義と、公共性、社会性、報道の自由、プライバシー問題、画一の答えがないところをみると、今後も課題は残るでしょう。

 P.S. 大流行のFacebook、振り返れば2007年にカリフォルニアでは、話題を呼んでいました。あるカンファレンス会場で、テーマは「コラボレーション」で、「Facebookをやっている人?」という質問に対して、会場で手をあげた人は2割ぐらいだったでしょうか。やはりシリコンバレーは3年進んでいます。
カスタマイズしたクーポン券の配布サービス、「このビジネスを日本でやって欲しい」と言われたのも3年前でした。

「デジタルとアナログ2」 – デジタルの進化とアナログの良さ(2) –

 「デジタル化の波」 というほど人財マネジメントの世界は押し寄せていないものの、やはり徐々にデジタル化は進んでいます。

 まずは、オペレーション的な業務。人事異動、労務管理、目標管理、報酬管理などなど。1000人を超える企業では、デジタル化されていないと事務作業が大変です。さすがに給与計算や社会保険業務は自社でデジタル化されていない場合、アウトソーシングしていると思いますが、一部の手作業処理が残っているだけでも「やっていられない仕事!」だと思います。また外資系企業のように、ライン長が人事プロセスを処理する場合は、セルフサービス機能がラインにもスタッフにも提供されていないと、とんでもないペーパーワークが発生しますね。

 一旦覚えてしまえば、デジタル化は便利。コピー機能やレポート機能を駆使すれば、生産性は10倍以上だと思います。逆に、使いこなせなければ、生産性を落とし、事務作業ばかりで一日を終え、大切な仕事が回らなくなります。

 戦略的な人財マネジメント分野でのデジタル化。これがどの程度役立つかについては、意見が分かれると思います。

 もちろん、ツールとして割り切れば、あるに越したことはありません。例えば、タレント・マネジメント。一般に「9ボックス」と呼ばれるタレント図も自動的に分類されると、非常に便利です。シミュレーションもできて、視覚化されるので、特に組織内における相対的な人財マネジメントには威力を発揮すると思われます。

 日ごろ、素晴らしいと思っていた人も、デジタル化してデータで判断すると、「なんだこの辺か」という現実に気づいたり、伏兵というか、意外と高いポテンシャルを持っている若者が登場したりします。意外性があるということは、データによって気づきがあったことの証明です。

 意外性がない部分は、9ボックスの1から3のあたり、つまりローパフォーマーのゾーン。このゾーンは、日ごろより問題があると感じる人が、しっかりそのゾーンに納まっています。他の人の意見を聞いても、ここはブレません。つまり、それだけマネジメントからのアテンションも高く、適切な判断が下されていた可能性が高いといえます。「ITは気づき」のツールというのが私の持論。管理対象が多ければ多いほど、マネジメントとしてのアテンションは分散します。その時、その拡散したアテンションに対して警告してくれる機能は、やはり助かります。気づかずに、有為の人財を見過ごしてはいけません。

 自分の判断を入れず、デジタル情報だけで判断すると、人財マネジメントはとんでもないことになりますし、マネジメントの重要な任務を放棄していることになります。しかし、公平性と生産性の観点では、デジタル化の進展は望ましい方向です。

 タレント・マネジメントだけではなく、人件費のシミュレーションやコンピテンシー管理と連動した人財開発、業績管理と人財配置シミュレーションなど、デジタル化が効果を発揮する人財マネジメント領域は広がっています。デジタル・デバイドによって、取り残されないようにしましょう。

「デジタルとアナログ1」 – デジタルの進化とアナログの良さ(1) –

 ネットワーク・プレーヤーを購入しました。

 まだセットアップ中ですが、音楽の世界も進化が凄いと感じました。流れる音は、透明そのもの。高級オーディオや高価な携帯電話は、要所に金を使ったり、色々な贅を尽くしていますが、ノイズの大元は機械的な動きから発生します。

 例えばCDプレーヤーの回転、大きく雑音を発生させます。音源ソースは光学的に読み取るので、読み取れなかった部分はレーザービームを左右に動かしながら読み直したりします。補正できなかった部分はノイズになります。こういった機械的な部分をできる限り排除したものがネットワーク・プレーヤーです。このネットワーク・プレーヤー、機械的な装置部分が少ない分、圧倒的に故障も発生しないとお店の人が言っていました。なんと音源コンテンツはNAS(Network Attached Storage)、ネットワーク上のファイル・サーバーで巨大な音楽の倉庫となります。

 音源をNASに格納するためのRippingという作業は、色々な圧縮方式でファイルを変換していきますが、何百ものCDを変換する作業の生産性を考え、有償のRippingソフトウェアを購入しました。(26$) CDの曲情報やジャケットはメタ・データとしてインターネット上から自動取得してくれます。もちろん、曲のインデックス付けや検索もライブラリー化されるので手間無し。昔、ジャズ喫茶のマスターがタイプライターでインデックスを作成し、別のノートに曲単位で整理したのを見たときは感動しましたが、デジタル化の技は一瞬にしてこれを実現します。

 ルーター経由でネットワーク・プレーヤーがサーバーとなり、ネットワーク・ドメインを形成し、操作はWi-Fiを用いたi-padとなると、これは一大情報システムです。

 音楽の世界は、超アナログでした。レコード・プレーヤーはビニール盤に刻み込まれたデコボコを擦って音を出していたし、私が遊ぶギターにしても音合わせのチューニングはある意味いい加減。これはプロでも同じです。部屋の温度が上がれば弦は伸びるし、寒い外を持ち歩いてきたら、弦は縮んで高い音になります。湿気でボディは影響を受け、鳴り方が変わってきます。デジタル・チューナーで合わせても、弾いているときはぴったりの音程は存在しません。指のタッチや弦の弾き方で微妙に音程やトーンは変化しているのです。ピアノもコンサートホールによって、響き方がまったく違います。

 人財マネジメントにもデジタル化の波が押し寄せています。続きは次回。

「民の叡智の活用」 – 機能する政治と行政 –

 JR のぞみに乗って、大阪へ演奏に行きました。演奏は単なるジャムセッションでしたが、のぞみの車内誌に気になる記事が載っていました。

「奈良県 生駒市 副市長を公募」

 「少子高齢化、経済の低迷、国の財政の悪化など、地方自治体を取り巻く環境は厳しさを増していくなかで、持続可能な自治体経営を続けるためには、様々な行政改革をさらに進める必要性があります。」と説明され、「勇気を持って挑戦を続けることのできるコーチ=副市長」副市長をコーチと位置づけています。

 他にも事例があったことが記憶の片隅にあったので、少し調べてみると、佐賀県が最高情報統括監(CIO)を公募したことや、富山県や岐阜市もCIO補佐官を募集していました。

 今日の新聞に、菅政権の支持率が22%と発足以来最低であるとの記事が載っていました。既に国民の期待値は無いと思われるので、衝撃はないでしょうが、このまま日本という国はどこへ行ってしまうのだろうと不安を覚えます。派閥争いや次の選挙と地元の利権だけを考えている政治家は、既にプロフェッショナルではありません。政治のプロでない人達に政治を任せなければならない国民は不幸だと思います。

 私は、民主政治を補完するものとして、政治と行政のアウトソーシングを主張してきましたが、プロフェッショナルに任せるべきです。政治家を100%アウトソーシングしては民主主義ではなくなってしまうので、政治機能の一部でも良いと思うが、それこそ国民が信じたマニュフェストや財務指標、国際競争力等をKPIに、民間にアウトソーシングすべきです。派閥争い等は視野から外れていくような工夫も必要です。

 行政も、諸葛亮孔明がやったように、公務員を半減させても間違いなく日本の行政は機能します。あまりに無駄が多い。

 米国ジョージア州サンディスプリングス市のように、10万人都市でさえアウトソーシングを活用し、一人の市長、4人の職員、6人の議員で運営できています。もっともこれは、公務員を採用していく時間的余裕がなかったことからできあがった体制ではあるが。

 認定制度をつくり、利権が絡まないプロフェッショナルといえる政治家に政治そのものをアウトソーシングする、もしくは現在の政治家を、利権や私欲と切り離す工夫と共に再教育する。ここに書くように簡単ではないが、変革を実施しない限り、このままでは滅び行く国である。

 民間の叡智を活用し、必ずしも公務員でなくて良い仕事は、アウトソーシングを最大限活用していく。問題も発生しますが、生産性が向上し、客観性が高まり、財政にも寄与する可能性があります。

「経営統合3」 – ラーメン店の小さな変化 –

 経営統合は大きな変化ですが、小さな変化も「生き残り」を助けています。
 ある経済誌の記事に大変興味深いものがありました。

 有名なラーメン店、40年間、親子2代の伝統を守ったお店です。常連客は、「昔ながらの変わらぬしょうゆ味」を目当てに通い続けます。

 面白いのは、店主のコメントです。「同じ味でやっていたら潰れています。40年前と同じ味だったら、不味くてとても食べれません。」客の好みの味は、時代と共に変化するし、より良い味を求めて客が気づかないように味を変えているとのことです。

 「伝統」と「継承」。 「継承」の本当の意味は、「そのまま引き継がれる」だけではないような気がします。

 まず、一般的に思い浮かぶのは、伝統あるものをそのまま保存、引き継いでいくこと。もう一つは、伝統あるものを環境にあわせながら、アクティブな状態を維持していくこと。言葉の意味がよくわからなくなってきましたが、「継承」というのは、ただ単に同じ状態で保存しておくことではないということに気づきました。

P.S. 
小さな変化は時間軸だけではありません。時代の流れがタテの流れだとすると、地域の流れはヨコの流れ。同じメーカーのカップ麺、地域によって味を変えています。タイヤのゴム質も、走る地域によって材質を変えているし、女性の下着も緻密に研究されています。

 私もラーメンは大好き、なかなか麺もスープも満足というお店はありませんが、今後、時代の変化を考えているラーメン屋さんも意識してみたいと思います。今日はたまたま、岡山でラーメンを食べてきました。岡山も、ラーメンの美味しいところだったのですね。

「経営統合2」 – ゴルディアスの結び目 –

 経営統合、「過去のしがらみ」を断ち切る良いチャンスです。

 買収される企業や組織、かつてはエクセレント・カンパニー、多くの場合一世を風靡した時代があったことでしょう。買収されたり、経営統合の対象になるということは、価値がある証拠です。コア・コンピタンスがあれば、戦略を変えたり、プロセスを修正することによってV字回復する可能性があります。

 何度も書いているように、どのようなエクセレント・カンパニーでも市場適応できなければ、朽ち果てていきます。エクセレントから普通の会社に、普通の会社からダメダメ会社に。「エクセレントなやり方を変えていないのに?」と言っても、周囲の環境が変わっていきます。

 従業員は馬鹿ではありません。市場の変化を読み取り、自分達も変わらなければならないと認識しています。しかし、なぜ変われないのか?

 それが「過去のしがらみ」です。歴史は人を育て、プロセスをつくり、人や企業の関係を構築していきます。できあがったものには価値がありますが、時代とともに、その関係性は複雑になっていきます。BというプロセスはAというプロセスを前提としているので、Aが存在しなければBというプロセスは成り立ちません。そのAというプロセスを熟知する人はCという人なので、Cという人は不可欠になってきます。CさんにとってAというプロセスを提供することは自分の価値なので、積極的には他人へ伝授しません。BというプロセスにはDやEという他のプロセスも関係していたとしたら、Bの変更は容易ではありません。

 企業の歴史というものは、上のようなしがらみの連続です。至るところに、「過去のしがらみ」が積み上げられ、これがゴルディアスの結び目になっているのです。フリジア王になったゴルディアスが、誰にも解けない複雑な結び目を作って牛車を縛りつけました。これがゴルディアスの結び目ですが、近くにいる村人達は、頑張っても解くことができません。また、どうしてこのような結び目ができたのか、歴史があるとそう簡単には解明できません。同じ文化の中で育ってくると、結び目の解き方がわからなくなってきます。

 経営統合のタイミングはこの「過去のしがらみ」を解く瞬間です。一刀両断に、過去のプロセスを断ち切ってしまうアレクサンドロス3世なのです。しがらみを感じていては、迷いや固定観念が入り、プロセスを断ち切れません。大変な痛みを伴いますが、ゴルディアスの結び目を解く唯一の方法かもしれません。時には一刀両断、新しい目で変革が必要です。

「経営統合1」 *経営統合(人)

 経営統合、今回は「人」にスポットを当ててみたいと思います。

 PMI、聞いたことありますか?

 Post Merger Integrationの略で、買収後の経営統合の後、成功裏に統合効果を出していくことを目指すプロセスの総称です。

 そもそも企業文化の異なる会社や組織が統合するわけですから、そう簡単には成功しません。赤字企業を除き、買収時には株主価値に加えて、数10%のプレミアを付けることが一般的ですから、そのプレミア以上のシナジー効果が求められます。

 そもそもその前に、経営統合の目的を明確にすることが重要です。目的は下記のように色々あります。
– 企業規模の拡大(売上、市場、店舗、R&D)
– 顧客の獲得
– 競合潰し
– 人財の獲得
– 新たなビジネスモデルの獲得、もしくは補完
– 知的財産(IP)

 上記の中で、競合潰し、または特許など切り分けできる、明らかに企業所有の知的財産を除けば、「人」の役割はどの項目にも大きな影響を与えます。経営統合の成功と失敗は、人財のスムースな吸収が半分以上の鍵であると言っても過言ではありません。実際、企業買収を行ったものの、買収後に優秀な人財は誰もいなくなって、企業価値が大きく減少してしまうことは少なくありません。競合潰しの敵対的買収であれば、それも想定内かもしれませんが、支払う対価は想像以上に重荷となります。

 企業文化の差異を考えながら、人事制度の相違・格差を吸収させ、働く人のモチベーションを維持していく、なんと難しいプロセスでしょう。「企業は人なり」がまさしく露出することになります。置き換え可能な人達の集まりでは、この難しさはありませんが、ROAの高い企業は必ず「人財」を抱え、活かしています。
 買収側が、「人財を活かす」という発想を持っていること。これは大前提です。トップ・タレントを逃さない様々な仕掛けもあります。一方、重複部門や機能はリストラの対象にもなります。

 私の経験から言うと、マネジメントと従業員、両方のマインドがCSFとなります。どちらの場合も、本人達にとって変化ですから、この変化をいかに早く受け入れることができるかがポイントとなります。

 マネジメント、つまりリーダーは変化をドライブしていくこと、チェンジ・エージェントになることが求められます。自ら変化を創っていく気持ちが必要です。もちろん、変化させるだけではプロセスの破壊になるリスクが大きいので、既存のプロセスをどのようにスムースに移行、変化させていくか考えながらのチェンジ・エージェントにならなければなりません。

 一方、従業員は、この変化を楽しむ、受け入れるための工夫をするという気持ちでしょう。「しがらみ」があって、人はなかなか変われないもの、皆さんも実感しているのではないでしょうか。経営統合のような外圧がかかる良いタイミングに、自分と仕事を変化させるのです。既存の価値観とは異なるプロセスを受け入れることになるので、大変なストレスですが、変わらなければ化石化、カラパゴス化してしまうリスクが残ります。

「世界の中の日本」 – 中身の良さと露出 –

 5000人入る会場は満員。ある国際カンファレンス、日本人がキーノート・スピーカーに登場しました。

 国際競争力は衰え、後ろを見ればマレーシアが日本に続き、世界は中国とインドばかりを見ている今日この頃。ネイティブの発音ではないし、帰国子女という感じではありませんが、英語でのプレゼンテーションは光っていました。このような場合、下手でも、とにかく自分の言葉で伝えることが大切です。

 ビデオも製作し、最初は日本の伝統的な美を描いたものでした。京都と思われる背景のなかで、琴の音色と風景が日本の侘び寂びを想わせます。木工細工を組み合わせた襖が紹介され、日本の微細技術をイメージさせます。その後、対照的に半導体などのハイテク技術が紹介されていきます。伝統的な日本の良さと、優れた先進技術をアピールする格好のビデオでした。

 プレゼンテーションの中身は、その企業がヒューマン・セントリックな未来を目指しており、ICTがもっと人々の生活に役立つことを狙っているという内容でした。数名のキーノート・スピーカー・プレゼンターの中で、アジア人はこの日本人だけでしたが、来年は日本人以外のアジア人が大きく増えるんだろうなと感じました。

 会場の5000人の反応は、感動を素直に表して大拍手。国際社会の中でプレゼンスが下がっている日本をアピールしてくれました。

P.S. 
リハーサルは何度も繰り返したそうです。日本でも自社の体育館を借り切り、大道具を200万円で製作して入念な準備をしたとのこと。社内公用語が英語になった会社にびっくりしていてはいけません。良いものを作っているだけでは、グローバル競争からどんどん取り残されていきます。言語に代表されるいくつものハンデキャップは、なんとか準備で乗り越え、その企業が持つ良さをどんどん伝えていかなければなりません。
 自ら伝えない限り、「相手があうんの呼吸でわかってくれる」ことはありません。

「競争原理」 *勘違いの人達

 久しぶりに風邪をひきました。しかも米国への出張中でした。
咳が止まらず、急性気管支炎状態です。

 海外の医療費、高いですね。ご参考までに情報公開すると、初診料220$、検査料60$、薬代50$でした。クレジットカードの医療保険を適用できるかどうか、コンシェルジェ・デスクに確認してから予約しました。

 診察してもらったところは、知人に紹介してもらった日本人医師です。Medical Driveという名前がついた道路が通っていて、病院や研究所、薬剤薬局等、医療関係のオフィスや機関が集まった地域にそのクリニックはありました。マイケル・ポーターが書いていたクラスターというのは、このような地域を指すのだなあと実感しました。看板はでておらず、入り口はマンションのようです。

 日本人の受付嬢が出てきて、なんとなく一安心。ところが海外生活が長いせいか、相手に対する気遣いは表面的で、安心感は直ぐに消えうせました。診療後、薬局への道のりを説明してくれるのですが、相手の立場にたった説明がまったくできず、気づかずというお嬢様でした。何度か質問しましたが、期待どおりの返事は返ってこず、そのうち面倒になって尋ねるのをあきらめました。

 お医者さんの方は、普通の対応なのですが、なんとなく威張った口調が伝わってきて、どうも調子があいません。威厳を保つことを意識して、自然と対応が横柄になるのか、海外生活が長く日本人感覚が麻痺するのか、やたら偉そうです。

 診察時間は5分程度、検査も2分程度でした。紹介していただいた方には感謝するものの、患者側からすると、ほとんど選択肢のない状態でした。市場の需給が一致する「完全競争状態」とはまったく逆の「不完全競争状態」。日本では患者が寄り付かないのではないかと思われるクリニックでも、当地では関係ありません。日本人医師の少ない地域へ移住し、不完全競争状態に自らを置くというのも競争戦略の方法であると感じました。

 P.S. 
当初、「威張っているなあ」と思った医師も、例の受付嬢に対する気遣いには笑ってしまいました。コピーのやり方や書類の扱い、一生懸命フォローアップしています。世の中、やはり....

 写真のシロップ、医師は「麻薬に近い成分が入っているので、注意してください。」、また調剤薬局の人はIt makes you groggy.と言っていた(?と思われる)ので、服用時ドキドキしていましたが、何事もなくしっかり寝入るだけでした。