「米国人財レポート(2)」 – 人財マネジメント2.0(2) –

 皆さんにとって、「良い企業」というのはどのような定義になるでしょうか?

 ある金融サービス大手の方が話していました。彼は大学を卒業するとき、どんな企業に就職すればいいかを母親に相談しました。彼女は、2つの選択基準をアドバイスしたそうです。

– 雇用主がよいこと
– 良いリタイア(引退)ができること

この「良い引退」には色々な意味がありますが、不安なく退職後を過ごせることです。これは必ずしも1社における終身雇用での退職を意味するわけではなく、キャリアアップを経て、最後に良いリタイア(引退)を迎えることが重要です。現実に、この話している人も6つ目の会社/仕事であると言っていました。ちなみに平均的アメリカ人は、11の仕事を経験するそうです。

1つの会社で長年勤め、退職日を迎えるイメージは比較的し易いのですが、複数の会社で勤めながら最後に自分のリタイアをイメージすることは、意外と難しいものだと感じました。日本だと、「良いリタイアを迎えること」が会社選びの基準になることは結構少ないと思いませんか。「安定している」とか、「企業年金がしっかりしている」ということは、それに近い発想だと思いますが、若いときにリタイアメントを意識することはなかなか難しいです。

上記のような感想を持った帰りの飛行機の中、隣は上品な初老の女性。これからタイに行くらしい。世界各国を旅行しており、つい2ヶ月前にリタイアしたとのことでした。大学でスペイン文学を教えていたらしく、亡くなった旦那様も大学教授だったとのこと。のんびり旅行、余裕があって羨ましい限りですが、利子だけで食べていけると言っていました。教員の年金制度も恵まれているらしく、おまけにニューヨークの5番街の近くのアパートメントで暮らしているそうです。

羨ましがったら、「まだ遅くはない、自分も40歳代半ばから本格的に準備をし始めた。あなたはまだまだ若いんだから、きっちり計画することが大切。」とアドバイスされました。

最近銀行に行ったとき、『団塊世代のリタイアメント白書』というパンフレットが置いてあったので、思わず手にとりました。そこには「退職後の6つのリスク」が書かれています。インフレリスクや医療・介護のリスク、これらは理解し易いのですが、「そうかー」と思ったのは「長生きリスク」。長生きもリスクなんですね、リタイアメントを設計できていない人にとっては。

「米国人財レポート(1)」 – 人財マネジメント2.0(1)-

ある人財開発企業のユーザー会がサンフランシスコで実施され、参加してきました。いくつか気づいた点をレポートします。

 このユーザー会、参加者は600名程度ですが、人の育成に力を入れている一流企業ばかり。またその中でもCLOや人財育成の責任者が多く参加するので、世界の人財開発の流れがよく理解できます。70のセッションは、素晴らしい事例の集まりでした。

 私が聞いたメッセージの中で、印象に残ったものをサマリすると次のものになります。
– スキルを持った労働力は不足し、タレントがフォーカスされる時代になった
– 中国とインドの存在感が欧米に認知され始めた、日本はもはや視野から外れ始めた
– コミュニティ無しに、組織の成功はない
– エンゲージメントの重要性が認識された
– 「学習」は企業にとってのDNAである
– ハイ・パフォーマンスの文化とビジネスとしての成果が求められる
 

 社会の構成、働き方が大きく変わりつつあります。

在宅ワーカーが当たり前になり、会社で過ごした時間より、貢献した成果が求められます。一旦退職した人が別のスキルを持って、また会社に入ってきます。(ブーメラン・ピープルと名づけられていました)いわゆる海外版団塊の世代が退職し、子供のときからパーソナルコンピュータを与えられた世代が社会にでてきます。数年後、世界で一番英語を話す国民は中国人になってきます。コラボレーションはトップダウンではないところから生まれ、そのコラボレーションを支えるのはWeb2.0の技術。

「社内SNSを導入していますか?」という問いに対して、Yesと答えた企業はまだ少数派であったが、インフォーマルラーニングやコラボレーションは無視できない流れと言えます。B.G.これは’Before Google’というキーワードで、インターネットというとんでもないデータベースの宝庫と検索エンジンによって仕事のあり方も大きく変わりました。人財マネジメントはより複雑になりますが、「見える化」とタレント重視の方向性は間違いありません。

P.S. 
セッションででてきたメッセージの1つ。「2010年、結婚する人の8分の1はネットで知り合ったカップル」と予測されています。

これは実際最近あった出来事ですが、ある都内の高級ホテル。最上階のレストランで食事をしていたら、隣は妙齢のカップル。若者という時代は二人とも通り越しています。高価な身なりに、見栄の張った会話。席のレイアウトが近いので、嫌でも会話が聞こえてくるのですが、どう考えてもネットで出会い、お互いを確かめ合っている雰囲気。「私は甘えるタイプ、あなたは?」という感じです。二人とも財産がソコソコあることを自慢しています。この後どうなるのか?気になってしまい、食事が終わってもなかなか席を立てません。隣では「もう一杯飲んでもいいですか?」が繰り返されています。見栄の張り合い、とっても疲れます。最後は馬鹿らしくなって、隣のカップルの顛末を追いかけるのを諦めましたが、B.G.では考えられなかった事象ではないでしょうか。

富士ロックフェスティバルというイベントがあります。知人のミュージシャンは、車で出かけますが、一人だとガソリン代と高速道路料金がもったいないので、SNSで一緒に行く人を探すそうです。驚くのは、携帯電話でSNSにアクセスすると、あっという間に同乗者が集まって、行きも帰りもバラバラの人々で仲良く往復したとのこと。

ダボス会議でも取り上げられるWeb2.0のパワー。コラボレーションは人財マネジメントにおいても無視できません。