「自律型組織」 – 機会と成長 –

 丁度10年前、SAPジャパンで独立した社内カンパニーのリーダーになる機会を与えられました。人事モジュールの拡販とソリューションの提供を目的とした社内カンパニーです。ソニー等が先鞭を切って導入した組織形態で、持っている機能にもよりますが事業部制に近い概念の組織です。

 社内カンパニーを設立した理由は大きく2つ。

– 意思決定を素早く行い、直ぐにアクションを取って行くアジリティある組織にする
– 若い人財に権限委譲し自律型社員を育成する

 2つ目の理由は、当時の中根社長から直接聞いていませんでしたが、その社長が新人へのスピーチを行った際に「30歳代のカンパニー・プレジデントを創りたかった。」と話をしていたそうです。完全主義を超える厳しさで、鍛えてくれた中根さんですが、私と、若い組織を育てようと考えてくれていたのでしょう。

 「人の採用と配置」、「マーケティング」、「独自ソリューションの開発」、「戦略提携」など、勝手に色々なことをやらせてもらった。今思えば、ほとんど中根さんに相談したことはなかった。怖いもの知らずという年代であったかもしれないが、その背景にあったのは自己責任という気持ちが大きかったと思う。チームメンバーもカンパニー成功のために必死で働いてくれました。

 結果は官僚的な組織とは正反対。失敗も数多くしましたが、自分で判断、自分でアクションできる若い人々が多く育ちました。これはやはりこの「機会」を与えてもらったことが大きな成功要因です。優秀な人は山ほどいますが、多くの人々はこの成長の機会を与えられていません。みんなの素直な目線が同じ方向を向いていて、各人が自分の良さを発揮していれば、成果は必ず出ます。しかも自律型の組織は、行動が早いのです。

 P.S.
年末にこの組織の一部メンバーが集まりました。参加できなかった人も含め、多士多才。新卒だった人が立派に成長し、今では中堅、幹部として色々なところで活躍しています。中には若いながらもトップパフォーマーとして全社から表彰された人財もいます。やはり人の成長、組織の成功は、人々を信じることから始まりますね。