「ホワイトカラー・エグゼンプション」 – 時間ベース労働と成果ベース労働の選択と提言 –

日本版ホワイトカラー・エグゼンプションは、以前通常国会への提出が断念されたままである。グローバル競争に対する日本国民の平和ボケ、政府の説明不足、成果主義後進国という事実が如実に表れている事象である。

まず第1点、グローバル競争下において、日本人ホワイトカラーの生産性の低さはよく指摘される事項である。私自身もそれは非常に感じる。

ダラダラした会議、リスクを取らないリスク、時間軸のないビジネス、事象を語るだけで対策が出てこない管理職、イニシアティブの弱いリーダー。海外で会議に参加すると、何か問題があった場合「お前はどうしたい?(どのような対策を何時までに取るのか?)」と必ず聞かれる。「そこのところはよく慎重に検討して....」なんて答えは答えとして認めてもらえない。もちろん個人レベルの比較ではないので、一概にコメントできないが、同意していただけるグローバル・プレーヤーは沢山いると思う。ビジネスを日本という枠にとらわれず考えていくとき、生産性の高い連中と戦っていかなければならない。その時意識しなければならないのはスピードと成果の質である。必要とした時間ではない。日本版ホワイトカラー・エグゼンプションは時間軸を伴った成果に目を向ける絶好のチャンスであったと思う。残業代削減のための悪法だと考えるのは、曲がった見方である。

例えば、ホワイトカラーだけでなく製造ラインにおいても生産性を謳えないわけではない。1分間に5個製造するラインであれば、1時間300個を目標成果とすればいいのである。成果物ベースで評価するとすれば、それより早く終わっても、遅く追加の時間がかかっても給与は同じでよい。早く終わった分には、生産性が高かったということで、特別手当をつけるぐらいの勢いが欲しい。この適用は全ての業務、職種ではなく、もちろん警備員のような、存在すること自体が付加価値をもたらす業務もある。これは対応した時間で評価すべきで、偶発性を伴う「犯人を3人見つけること」を目標成果とするわけにもいかない。

次に2点目として、政府の説明不足、説明下手を指摘したい。まずエグゼンプションという単語を理解できる人がどの程度いるのかを考えて欲しい。米国には「W4フォーム」という人事関連の申請書等があって、私も「そこにはそんな単語があったなあ。」というレベルの記憶しかない。野党からわかりやすい「残業ゼロ代制度」などと表現されて、こちらの方が認知度が高まってしまった。主婦の会話を聞いていても、「あれって残業代を無くす制度だよね。」と真剣に会話されていて、あきれんばかりである。生活費(生活残業費?)が削られると主婦にとっては一大事、当然国民は反対モードになる。  過労死問題も議論されているが、それは残業代を支払っても同じ問題が残るはずであるし、そもそも自己管理が現代のビジネスパーソンの基本である。逆に家庭や趣味重視のライフスタイルが有っても良い。

それでは今後日本でどのように成果型の働き方を推進していけばいいのだろうか?

私からの提案としては、「本人の合意とコミットメント」を主軸に適用していけばよいと思う。

勤務形態にエリア限定社員があるように、時間をベースに考えた賃金か成果をベースに考えた賃金かを本人に選択させるのである。当然、目標達成された場合の成果賃金は時間型より高く設定すべきである。まあこのあたりも企業の戦略的人事の1つであるが、コミットメントを高く評価しないと、みんなコミットメントしなくなってしまう。また、もう1つの試練になるのは、「評価の仕方」である。成果をどのように評価するか。我々はまだまだ下手くそである。KPI(Key Performance Indicator)を設定し、数値で評価できる項目は客観的に把握し、納得感のある評価を行っていかないと問題が残る。  レベルの低い国会でノロノロしているうちに、よその国はまた一歩生産性をあげていく。というより、生産性で差をつけられて困るのは、『フラット化する世界』にあるように国家ではなく個人なのだ!