「熟成と腐敗」 – 本物を追求する心とマネジメント –

某テレビ番組のやらせで多くの消費者が踊らされた。皆さんも記憶している納豆ダイエットの番組である。

そもそも私自身は、忙しいせいもあってほとんどテレビを見ない。あのアホらしい内容で時間を潰されることは耐え難い。
日本の発酵文化と技術については、いつか紹介したいと思っていたが、良い機会なので、取り上げたい。

今は倒産してしまった那須食品の納豆、実に美味かった。日本の納豆が正式に海外で紹介されたのは、大正時代にイタリアのWHO会議で紹介されたこの那須食品の納豆である。当時の宇都宮大学の教授が持って行ったとのこと。
この日本の伝統食品は、1000年の歴史があり、弥生時代から存在しているという。発酵技術と食は、日本の誇るべき文化だと思う。

那須食品社長のM氏が語り始めると、このあたりの薀蓄は数多くでてくる。一緒に福島県へ焼肉を食べに行ったときのこと。「腐りかけの肉は美味い」という話題になったが、彼曰く、「熟成と腐敗は違う」と正確なコメント。
その焼肉屋には特上の上に極上という肉があるが、ごく少量しか取れない。肉を切り取る部位が少ないことも理由のひとつであるが、熟成過程の中でカビが生え、それを削り落としながらさらに熟成させていくのでどんどん小さくなっていくからだ。これは明らかに腐敗菌による腐敗と異なる。
納豆は納豆菌による熟成である。納豆菌にはタカハシ菌とミウラ菌の2種類しかないそうだ。賞味期限の切れた納豆を食べても、熟成である限り病気にはならない。これは私も実験して食べてみた。乾燥して固くなるだけである。

今回の一瞬の納豆ブーム時、スーパーの棚から見事に納豆が消え、M氏に
-「売上げが伸びていいね。」
と言ったところ、
-「品質管理上、直ぐには増産できない。」
とすぐに否定された。
熟成させるには最低3日間必要で、最近の納豆があまり臭くないのは、熟成期間が足りないからだそうだ。
また、納豆ダイエット効果については、
-「もちろん間接的な効果はあるかもしれないが、食べた後、適切な運動を行って初めて効果が発揮される可能性がでてくるのであって、食べるだけでは痩せない。いたずらに増産しても意味が無いのでやらない。」
と適切なコメント。楽して大きな効果があるはずもなく、既に一過性のブームに過ぎないことを捏造発覚前から見抜いていた。これこそ本質を見抜く力とマネジメントである。

色々勉強させられた那須食品であったが、大変残念にも2012年に倒産してしまった。B to BからB to Cに戦略を移した矢先に東北沖の大震災が影響し、耐え切れなくなったという。良いものとビジネスは別物という残念な結果である。

これまで述べた熟成と腐敗は人間にも当てはまる。

年功序列という人事施策は、色々な経験を得て人間が熟成していくという仮説のもとでは成立する。何年経っても同じ仕事の繰り返しであったり、間違った歳のとり方では付加価値は増殖しない。それにもかかわらず、年月を経ただけで高給を払ったり、威張っていることが年功序列の弊害である。酷い場合には、長年の悪習や麻痺で、汚職や老害のような腐敗が始まる。
私自身は、経験を重ねた年配の方をやはり尊敬する。経験がその人の考えや判断力と融合され、人間の幅を醸し出していく。

「ラスベガスのノン・プロフェッショナル(2)」 – 英語で喧嘩しよう –

昔、クラップスのテーブルでギャンブル好きの日本人Sさんに会った。そのSさんは、やはり賭けたのに、認めてもらえないのでトラブルになる。「俺は英語ができないんだ。」と言いながら大声で日本語のままクレームしている。

少しは助けてあげたが、こちらもSさんが正しいかどうか自信がないので、迫力がない。ディーラーもピットボスも主張をまったく取り上げてくれない。そもそも伝わっていない。
頭にきたSさんは大声で叫び、チップとダイスを遠くに投げつけて去ってしまった。そのアクションは凄かった、自己主張という観点では立派。周りの人からは「クレージー」という声が上がっている。しかし自分の主張を認めてもらえない以上、喧嘩に勝ったことにはならない。

ここからは前回のトピックの続き。

大トラブルになる前にピットボスにはさっさと登場して欲しいと思っていたので、腹立たしい。しかし、さすがにボスが来ると、怒りのディーラーも仕方ないという顔をしている。顛末は見ていたので、私は何も言わず「お代官様、公平なお沙汰を!」という感じで顔を見ていただけだが、何枚賭けたかを確認した後に、あっさり支払いを命じた。

その後ゲーム再開となったが、私は気分が悪いので、もちろん場を変えようと思っていた。ただ惰性というか何も考えず、いくつか賭けてしまったのだが、偶然にもそれが的中する。小さい配当であったが、それをきっかけにこのけしからんディーラーと勝負したくなった。

ルーレットには、あきらかに癖があり、円盤(ウィールという)の形状も色々な種類がある。例えばウィールの中にある山はドーム、外側はボウルと言ってそれぞれ傾斜が付いているが、ドームやボウルの傾斜角が浅いとハネる確立が高くなるし、深いとストンと落ちやすい。ボウル斜面にはピンが打たれているが、その位置が上の方にあると球の遠心力がない状態のときに当たるので、安定した落下になるが、下の方にあると加速度によってハネる度合いが強い。ボールポケットと呼ばれる穴も、深いものと浅いもので球の収まりが異なる。なにより、一番癖が出やすいのは人間の癖である。
上手いディーラー(こちらが予測し難いディーラー)は、球を色々なところにバランスを取って落とす。時計で表現すると、順番に12時、6時、3時、9時といった場所に落とすディーラーである。これは予測しにくい。体力的な問題もあると思うが、女性のディーラーは偏ったパターンが出易い。これは個人の感覚なので間違っているかもしれないが、許していただきたい。
投げるスピードとウィールの回転スピードも速い遅いがあり、投げてから球が落ちるまでにウィールが5回転以上回ると結構球は散らばる。4回転以下の場合は、(やはり早いよりは)予測し易い。女性のディーラーの場合、明らかに回転数は少なく、記録を取ると、偏りが出易い。よく隣の数字に落ちたりする。

ルーレット台には、台の横に電光掲示板が立ててあり、過去の的中数字が表示される。赤が非常に多いとか、奇数ばかり的中しているなど、以前のパターンがある程度読める。
先ほどディーラーが出した番号「25」を見ると、過去にも的中している。その次に的中した番号は「6」。試しに「6」とその両隣、また「25」の両隣に賭けると、見事に「6」が的中。不機嫌な顔で配当する彼女にチップをあげると、それが気に入らなかったのかまたまた怒り出し、唸りながらチップを無造作に投げ入れる。
人間、感情が高ぶっているときは、特に癖が出易い。緊張すると貧乏ゆすりが止まらなかったり、髪の毛を触りだすなど、人それぞれに癖がある。
怒ったまま球を投げると、またまた連続で「6」。私の勝ち分は増えるばかり。その次も隣の数字で的中、さすがに可愛そうになってきた。相変わらず不機嫌な彼女をマネージャはとうとう交代させた。感情のコントロールは本当に大切だ。

オチになるかどうかわからないが、チェンジマネジメントした後、語学ではハンデキャップがあるものの、冷静な日本人に戻った私が大勝利!
私は典型的な日本人で、とにかく表現が下手。西欧人からすると、無表情で何を考えているか最もわかりにくいタイプだろう。
喧嘩する場合、この表現の少なさは弱点になって、自己主張が弱くなる。笑われるかもしれないが、「怒ったフリをしなければ….」と考えながら交渉する場合が、日本にいるときより圧倒的に多い。そうでないと、相手に伝わらない。
私を含め語学力にハンディキャップがある日本人は、表現力と冷静さを武器に戦うしかない。
ちなみにビジネスで戦うポイントは何点かあると思うが、グローバルなプロセスや考え方を理解した上で、自分の強みが出せる土俵で戦うことが最も重要である。一例をあげると、(当たり前であるが、)日本についての知識や情報、自分の専門領域が勝負どころとなる。

ちなみにSAP社長時代の中根さん、怒ったときは、言葉少ない英語であっても、迫力満点。私の隣の大男のドイツ人がブルブル震えていた。

「ラスベガスのノン・プロフェッショナル(1)」 – 英語で喧嘩しよう –

コラムでカジノのプロフェッショナルを紹介したところ、好評をいただいた。

社外からのアクセスはほとんど無い状態と思っていたが、意外と見てくださっている。カジノが好きな人も少なくないこともわかり、安心した。別のカジノコラムを立ち上げた方がいいかもしれない。皆さん、自制心を持って楽しみましょう。
ハウスエッジ、つまり店のショバ代(取り分)はギャンブルの中では非常に低く、特にゲームによっては客側が有利なものすらある。私はこのハウスエッジの低いものしか手を出さない、2時間ぐらい腰を落ち着けて冷静に楽しめば、チャンスも巡ってきて、統計論ではハウスエッジに近づくのでそんなに負けないはずである。(一般的な実態としては、必ず負けるのでご注意。)

今回紹介するのは、前回と正反対、プロ失格のディーラーとマネージャである。
ゲームはやはりルーレット。多くの人が自分の好きな数字に賭けると思うが、私も予測できない状態の時は好きな数字に賭ける。いわゆるラッキーナンバーである。事件のあったときは17番とそのストリートベット(16、17、18の3つの数字をカバーする3目賭け)に賭けていた。17番には的中しなかったが、16に球は落ちた。オッズは12倍、確か2枚か3枚賭けていたと思う。好きな数字ばかりに落としてくれるほど神様は優しくないので、近辺のストリートベットやコーナーベット(4目賭け)を行うとリスクヘッジになる。的中したにもかかわらず、ディーラーが私の賭けていたチップを回収してしまったのがトラブルの始まり。大量のチップが台の上にあって、多くの客が入り乱れるとディーラーもなかなか大変、とても忙しい。抱えるように、ハズレチップと共に私のストリートベットを回収してしまったのだ。(所詮人間だから、こういった間違いは日常茶飯事。ボケッとしていて損をしている人は結構いると思う)
賭けていたことをクレームすると、最初は無視。再度主張すると、「本当か?」と疑っている。

外国人というと定義が広すぎるので、ここではアメリカ人とさせていただく。フランス人の交渉力と弁論能力はアメリカ人を凌駕すると思うが、アメリカ人も自己主張は強いのはご存知のとおり。空港等でトラブルになった場合、スタッフレベルでは融通が効かずマニュアルどおり処理されてしまう。時間もそんなにないので、諦めざるを得ない経験は何度かした。こちらも英語のハンディキャップもあるしトラブルになると、非常に手強い。
親切な姿はあくまでも彼らの余裕がある場合であると考えた方がよい。彼らは弱者に対しては優しいのである。弱い者いじめをしない教育を受けているから、こちらの立場を気遣ってくれる(ここは日本の教育現場と大違い)。ただしこれはある意味で対等な立場ではなく、日本人がナメられている場合があるので一概には喜べない。曖昧な日本人スマイルではいけない場合がビジネスにおいてもある(「ノー」と言えない日本人というのはこういう状況から生み出された言葉だと思う)。自分達の利害が関係してくると、態度は変わってくる。猛スピードで、スラングを交えて主張してくると、こちらは非常に不利な立場におかれる。

こういった場合、非常に重要なキーワードがあって、それは「フェア(fairness:公平)」というキーワードである。「それはアンフェアかもしれない」と言うと多くの場合、顔色が変わる。言葉もストップする。フェアというスタンスは彼らのプライドであるから、聞き捨てならないということになる。
そこで一旦チェンジペースというか、こちらの言葉を聴いてもらえる状態にして、論理的に主張する。英語もゆっくり喋ればよい。チェンジペースしないと、我々の3倍のスピードで主張されてしまうのだから勝てるわけが無い。上記の例のように英語が不得意な日本人ならではの喧嘩の仕方は、英会話教室では教えてくれない。異文化コミュニケーションにおいて悩んできた者の知恵である。

ノン・プロフェッショナルのディーラーの話に戻る。そのディーラーはポーカーフェースのディーラーとは違い、非常に感情を露わにする女性である。大柄で、ラテンアメリカ系の人だった。
しぶしぶ私の主張を認め配当を払うが、嫌がらせか、賭けた枚数は1枚で計算している。ストリートベットはオッズが低いので、1枚賭けることは絶対になく、最低でも2枚を自分の基準にしているため自信はある。
-「自分は最低でも2枚賭けるので、1枚はありえない。疑うのであればビデオを確認しろ。」(私)

-「何枚賭けたかもわからないのに、払えない」(ディーラー)

-「ダメ、ダメ」(ディーラー)

ディーラーは非常に不機嫌になって、こちらも気分が悪い。ピットクラーク(監視人)が2人のトラブルを見ている。頭の中は、どうやってチェンジペースにもっていくかで一杯だ。何枚賭けたかで争っていても埒があかない。出発点に戻るに限ると思った。
-「It was your fault fisrt, not my fault, wasn’t

「ベンチャー企業のスーパーレディ達」 – can do attitude –

今回はベンチャー企業におけるスーパーレディ達を紹介したい。
外資系ベンチャー企業で活躍するスーパーレディ達もなかなかのものである。完成しているところ、未熟なところ、人間なので両面併せ持っているのは当然であるが、基本的には尊敬できる人々であった。リスクの多いベンチャーで頑張れる人財そのものが貴重である。

まずはMさん。MBAホルダーで利酒師(ききざけし)、将来はお洒落な飲み屋開業を狙っているらしいが、現在はシニアコンサルタント。製品知識では誰にも負けない。韓国のプロジェクトを見事に納めたグローバルプレーヤーでもある。米国在住の時にこのベンチャーを知り、日本へ帰国後応募してきた稀有の人財。当初はこんなベンチャーに入社してしまって、大いに後悔したらしい。真面目な性格で、いい加減な私はいつも叱咤されている。

次にNさん。日経ウーマンにも登場したバイリンガル人財である。とにかく素晴らしい点はプロアクティブなこと(先手必勝)。経験はまだまだかもしれないが、自分で考え、自分で物事を進めていく姿勢を持っている。「前例がない」、「ルールがない」と止まっている人はどんどん置いていかれる世の中である。そんなことを言っていると、ベンチャーではとても務まらない。ここまで書くと、なんでも勝手にやってしまう野放し状態に聞こえるかもしれないが、しっかり報告し、レビュー・ミーティングも自分でセットしてくれる。「びっくり癖」と呼ばれているが、なんでも驚くのでとにかくわかり易い。

コンサルタントのAさん。とにかくセンスが良い、センスの良さは、資料にはっきり現れる。見やすく美しい。こちらはいくら努力してもソコソコの出来上がりにしかならないが、Aさんの資料は見る気にさせる資料になる。クライアントに対する説明も、要点を得たもので、わかり易い。これも1つの才能だと思う。昔、私もコンサルティング技法を学んだとき、「Talk Net(簡潔に!)」を教えられた。ダラダラ説明したあげく、何を説明したいのかよくわからないケースは最悪だ。

もう一人のMさんも独自の世界を持っている。学会活動や論文記述が大好きである。なんとお祖母さんの兄が、日本のテレビの父と呼ばれる高柳健次郎氏だそうである(「イ」を映した発明者)。これはただ者ではない。自宅には多数のコンピュータを接続し、学習効果の因子分析を行っている。Sabaからコンピテンシー・アセスメントのツールがでてきたら、それはMさんの研究成果である。キャリアカウンセラーの有資格者でもあるので、将来に不安がある方は相談してください。

当初約束の2年を過ぎ、ベンチャーを卒業していったが、3ヶ国語を話すLさん。高い交渉能力とパワーは、弱い立場の日本を世界に認めさせた。とにかく個性的、よくコンサルタントで印象が薄い人はダメと言われるが、集団で訪問しても間違いなく一番目立つ。頭の回転の速さは、ピカ一、大学も大学院も特待生である。何か調査を命じたとすると、どこから見つけてきたのかというぐらい適切な情報を提供してくれる。しかも単なる情報の集まりだけでなく、エグゼクティブサマリーやファインディング、ケースによっては、付帯意見というか自分の推奨(リコメンデーション)がまとめられたレポートが指示もしていないのに報告される。とにかく仕事が早く、普通の人の2倍、能率の悪い人の10倍と言っても過言ではない。

文句も人一倍だが、土日のどちらかは働いていたほど仕事熱心。このような高パフォーマンスを出す反面、他の人の机まで雑巾がけしている人財であった。

印象に残っているのは、米国でセールストレーニングを受けていたときのこと。確か交渉技術やコミュニケーションがテーマだったと思う。ロールプレイをやり取りし、みんなインストラクターの話術に負けてしまう。ところがLさんだけは、素早く流暢な英語で切り返し、長いやり取りの末インストラクターが両手を挙げてギブアップ。世界から集まった60人程の外国人が大拍手、すごい!
私は単なるおっちょこちょいだが、不思議と私のことを今でも尊敬してくれている。

こういったベンチャーのスーパーレディ達に共通するココロ、それは「can do attitude」。たまに採用基準の職務記述に記載されているが、「とにかくやってみよう精神」である。チャレンジもしないうちから、色々言い訳したり、自分の閉じた世界での推測で「うまくいかないと思うので….」決めつけてしまい、前進しない人がいる。「ノー」というのは簡単、言い訳けを考える暇があるのなら、どうやって無理難題を解決するかを考えるべきである。

「ベンチャーに来たスーパーレディ」 – グローバル人財は日本に何人いるか? –

私の経営していた外資ベンチャー企業にスーパーレディがやって来た。

海外法人が日本支社を紹介したことがきっかけとなり、スーパーレディAさんはやって来た。香港のコンサルティング会社に依頼されて、日本の市場調査を実施しているとのことである。

アプローチ方法は見習わなければならない。紹介されてきたとはいえ、営業活動のたぐいと思ったので、最初のメッセージは「お断りモード」。マーケティングイベントや営業活動は、秘書が匂いを嗅ぎ分けて断ってくれるのだが、今回は当社のマーケティング担当者もクリアして、面会することになった。

まず驚いたのは、日本語が流暢で対応が日本的であること。例えば、頭を下げる仕草など。これは日本社会におけるやり取りを肌身で体験していないと出てこない。なんと日本に関わって16年とのこと。

キャリアも素晴らしい。プリンストン大学を卒業して、特別研究員として東京大学大学院で日本の防衛問題について研究し、防衛関係に詳しい国会議員の秘書として実務経験も積んでいる。フルブライト奨学生であったようだ。その後ファイナンシャルタイムスの特派員として自動車、電機業界を担当し、日本のテレビのコメンテーターとしてレギュラー出演している。その後英国に渡り、同じくレポーターの仕事をした後に、中国の特派員になっている。

日本語はしっかりしているはずで、JETROが設立したSir Peter Parker Awardsというビジネス日本語スピーチコンテストで優勝している。そればかりか、現在は中国に関する書籍を執筆中で、Penguin出版社から刊行される予定とのこと。中国語もかなりのレベルらしい。National Committee on US-China Relations Young Leaderフォーラムのメンバーでもあった。

ヨーロッパには複数言語を話す人間も数多くいるし、インドにおいては一国の中ですら6つの言語を操らなければならなかったりする。言語だけの問題であれば、もっと多くのノン日本人が働いていてもいいと思う。
しかし日本という国は、非常に閉鎖的で、ノン日本人が働きにくい国であると思う。街は英語表記すら少ないし、アパート1つとっても入居しにくい。入局管理局は親切ではないし、なんといっても文化的な壁、例えば、国籍の異なる人が一緒に働くことが一般的には常態でない。Sabaのオフィスは、小さくても韓国、中国、インド国籍の人が働いていたし、ヨーロッパやアメリカ、オセアニアからも応援が来てくれる。前述の不便さは、彼らのビザの取得や個人的な相談を受けるに至って、私自身初めて気づかされることになった。
東京オリンピックを契機として、改善されることを願う。

今頃になって、政府は少子化対策などと言っているが、フランスは既に特別の補助金などで少子化対策を終え、目標を達成しているし、アメリカなどは、我々の知らないうちに3億人に迫る勢いである。10年前、日本はアメリカの半分の人口と思っていたが、気づくと日本の3倍になっている。これも戦略的な政治施策で、増えた1億人のうち5000万人は移民である。フランスも米国も戦略、戦術に長けている。政府の戦略性の無さが、労働環境のグローバル化や外国人招致にも表れている。

日本において「人」、「物」、「金」、「情報」の4つの中で、グローバル化が一番遅れている分野は「人」だと思う。

スーパーレディAさんはこのような国で、立派に活躍している。なんとも頼もしいではないか。海外で、同じように活躍できる日本人は、何人いるだろう?

「ラスベガスのプロフェッショナル」 – エンターテイメントを突き詰める –

当コラムでは、色々なプロフェッショナルを取り上げていきたい。ここではラスベガスに居たプロフェッショナルを紹介することにする。

ある年の年賀状にカジノ研究のことを書いたら、多くの方から反響があった。「何故細井がカジノ?」というコメントが多かったが、あの雰囲気が好きなんだから仕方ない。意外とハマッている人も少なくなく、凝った人は、各地のカジノで集めたチップを写真撮影して送ってきてくれた。    ギャンブルは、一般的に良い印象がないことは事実である。身を滅ぼすきっかけにもなるが、全ては自制心だ。この自制心は勝つためのポイントでもある。ようやく公式カジノの法案が準備され始めたが、未だ日本には公式カジノは存在しない。気持ちとしては微妙である。近くのカジノがあって欲しい反面、簡単に行くことができるようになると、少し自制の観点で恐ろしい。ギャンブルは快感物質を脳内に出すので、中毒症状を惹き起こし依存症を時に作り出してしまう。私自身、自制心は強い方であると思っているが、お台場等にカジノがオープンされると自信が揺らいでくる。これまで、日本の中ではギャンブルはやらない主義だった。

今回取り上げるのはラスベガスで遊んでいた時のこと。ゲームの種類はルーレットであった。そこそこ軍資金があったので、ミドルローラー(そこそこの掛け金をベットするプレイヤーのこと)レベルで遊んでいた。周りには小額のプレイヤーが多かったので、私が目立ったのかもしれない。また賭けに外れた時、たまたまピットボスの目についたのかもしれない。ピットボスとは、ディーラーの後ろでゲーム全体を監視するマネージャのことである。

雑談となり、「プロのディーラーは、落とすところをコントロールできるのか?」といった会話になった。シビアな国のカジノ、例えば韓国では考えられないことであるが、ショーンというピットボスは、私に笑顔を見せながら、ディーラーのブライアンに向って「Kazuoの番号に落とせ!」と言ってくれた。

Bryanはとても真面目そうで落ち着いた、シニアなディーラーである。無言ながらも頷いたので、私はゼロを示した。ゼロはディーラーが落としどころを練習する時に狙う場所と聞いていたからである。

いつもより心持ち慎重に、ルーレットの球を投げたような気がした。

最初の1投、球はゼロに落ちそうになった後、番号区切りのバーに当り、跳ねて5つ横の4番の数字へ落ちた。ルーレットを経験された方は理解できると思うが、予測した近辺にもベットしておくのは一つの作戦である。近辺の4番にも賭けておいたので、そこそこの配当が戻ってくる。

さて2投目、またも真剣な表情で球を投げると、なんとゼロにスポリと球は収まった。周囲からはどよめきが起こり、私の目の前には大きなチップの山がくる。ピットボスのSeanはウインクして笑っている。あまりにも驚いたので、ディーラーに質問。

-「いつも的中させることができるのか?」(私)

-「いや、いつもではない。」(ディーラー)

-「簡単そうに見えた。」(私)

-「簡単ではない。でも俺よりもっと上手な奴がいる。」(ディーラー)

この事実からわかることは、ギャンブルも、運のみで支配されているわけではないこと。プロのディーラーにかかれば、統計的な勝率はあてにならないということだ。完全にコンピューター制御されているスロットマシンならばいざ知らず、人的な要素が絡むゲームでさえも我々はコントロールされている。  人間的な要素が多いことがカジノ好きの理由でもあるが、やはりどの世界でもプロがいることを実感させられる。カジノには色々なプロがいるので、機会があれば他のトピックも紹介していきたい。

 

プロフェッショナルを感じさせる点は大きく2点ある。

まず、ディーラーの技量と冷静さ。日ごろから訓練していることを感じさせる振る舞いと実力。指示されたことに対して、難しいと思われることでも技術で結果を出していく姿勢。

2点目は、顧客を楽しませるという点である。特にラスベガスはエンターテイメントという観点では、やはり最高水準ではないだろうか。

韓国は金儲け色が強いし、マカオやアメリカ各地にあるインディアンカジノは騒々しく落ち着かない。アトランティックシティもラスベガスほどエンターテイメント性を感じさせないし、ヨーロッパはアムステルダムやロンドンに行ったが、気取りすぎ。オーストラリアも悪くないが、スタッフがプロっぽくない。テニアンは閉鎖的。

とにかく気持ちよく遊ばせようという姿勢が随所に感じられる。前述のピットボスもセンスのある奴だ。

カジノは、「勝者をより大事にする」と言われているが、これも事実である。

 

「ホワイトカラー・エグゼンプション」 – 時間ベース労働と成果ベース労働の選択と提言 –

日本版ホワイトカラー・エグゼンプションは、以前通常国会への提出が断念されたままである。グローバル競争に対する日本国民の平和ボケ、政府の説明不足、成果主義後進国という事実が如実に表れている事象である。

まず第1点、グローバル競争下において、日本人ホワイトカラーの生産性の低さはよく指摘される事項である。私自身もそれは非常に感じる。

ダラダラした会議、リスクを取らないリスク、時間軸のないビジネス、事象を語るだけで対策が出てこない管理職、イニシアティブの弱いリーダー。海外で会議に参加すると、何か問題があった場合「お前はどうしたい?(どのような対策を何時までに取るのか?)」と必ず聞かれる。「そこのところはよく慎重に検討して....」なんて答えは答えとして認めてもらえない。もちろん個人レベルの比較ではないので、一概にコメントできないが、同意していただけるグローバル・プレーヤーは沢山いると思う。ビジネスを日本という枠にとらわれず考えていくとき、生産性の高い連中と戦っていかなければならない。その時意識しなければならないのはスピードと成果の質である。必要とした時間ではない。日本版ホワイトカラー・エグゼンプションは時間軸を伴った成果に目を向ける絶好のチャンスであったと思う。残業代削減のための悪法だと考えるのは、曲がった見方である。

例えば、ホワイトカラーだけでなく製造ラインにおいても生産性を謳えないわけではない。1分間に5個製造するラインであれば、1時間300個を目標成果とすればいいのである。成果物ベースで評価するとすれば、それより早く終わっても、遅く追加の時間がかかっても給与は同じでよい。早く終わった分には、生産性が高かったということで、特別手当をつけるぐらいの勢いが欲しい。この適用は全ての業務、職種ではなく、もちろん警備員のような、存在すること自体が付加価値をもたらす業務もある。これは対応した時間で評価すべきで、偶発性を伴う「犯人を3人見つけること」を目標成果とするわけにもいかない。

次に2点目として、政府の説明不足、説明下手を指摘したい。まずエグゼンプションという単語を理解できる人がどの程度いるのかを考えて欲しい。米国には「W4フォーム」という人事関連の申請書等があって、私も「そこにはそんな単語があったなあ。」というレベルの記憶しかない。野党からわかりやすい「残業ゼロ代制度」などと表現されて、こちらの方が認知度が高まってしまった。主婦の会話を聞いていても、「あれって残業代を無くす制度だよね。」と真剣に会話されていて、あきれんばかりである。生活費(生活残業費?)が削られると主婦にとっては一大事、当然国民は反対モードになる。  過労死問題も議論されているが、それは残業代を支払っても同じ問題が残るはずであるし、そもそも自己管理が現代のビジネスパーソンの基本である。逆に家庭や趣味重視のライフスタイルが有っても良い。

それでは今後日本でどのように成果型の働き方を推進していけばいいのだろうか?

私からの提案としては、「本人の合意とコミットメント」を主軸に適用していけばよいと思う。

勤務形態にエリア限定社員があるように、時間をベースに考えた賃金か成果をベースに考えた賃金かを本人に選択させるのである。当然、目標達成された場合の成果賃金は時間型より高く設定すべきである。まあこのあたりも企業の戦略的人事の1つであるが、コミットメントを高く評価しないと、みんなコミットメントしなくなってしまう。また、もう1つの試練になるのは、「評価の仕方」である。成果をどのように評価するか。我々はまだまだ下手くそである。KPI(Key Performance Indicator)を設定し、数値で評価できる項目は客観的に把握し、納得感のある評価を行っていかないと問題が残る。  レベルの低い国会でノロノロしているうちに、よその国はまた一歩生産性をあげていく。というより、生産性で差をつけられて困るのは、『フラット化する世界』にあるように国家ではなく個人なのだ!

「人財マネジメントの原点」 – 神戸のタクシー運転手 –

「企業は人なり」、「人のパフォーマンスが企業パフォーマンスを向上させる」はよく耳にする言葉である。

私の人財マネジメントの原点は、神戸のタクシー運転手さんである。  当時私は、SAPという会社で人事モジュールの責任者という立場であった。大切なお客様の一つに川崎重工業があり、よく神戸に出張していた。神戸で乗ったタクシーの運転手がなにやら無線(携帯電話ではなく)で会話している。私に一言ことわったうえで、どうも仲間とやり取りしているようだ。

「今日は出とうか?ああ、ほんなら良かった。」

休んだ仲間を気遣っている模様。運転手仲間のグループがあり、どうもリーダー格のようだ。グループ内でルールをつくり、モチベーションマネジメントをしているとのこと。  仲間に声をかけあうだけでなく、情報交換をマメにするという。渋滞情報、客待ちタクシー行列の効率的スポット、人の流れなど、生きた情報とはまさにこのことである。最新テクノロジーのカーナビでも人の流れやタクシーの待ち効率は出てこない。ビッグデータが効率よく集まり、解析の精度が上がれば、人の流れやタクシーの必要スポット情報は提供されてくるであろう。またUberのような配車サービスも出てきた。テクノロジーを使ったパフォーマンス向上の良い事例であるが、現時点では人々のコミュニケーションと知恵に敵わない。

だんだん運転手のおじさんは自慢モードになってきたが、今度は千円札の束を見せられた。皆さんはタクシーに乗って、一万円札を出して嫌がられた経験はないだろうか。酷い運転手だと、客に両替させようとする。その運転手と仲間は、毎日十万円分を千円札に両替しておくという。特に朝一番はお釣りがないことが多いので、スムースに釣り銭を渡し、客を不愉快にしないように心がけていると言う。  さらに驚いたのは、降車するときに渡されたお釣り袋である。乗った距離はワンメーターであったのだが、ワンメーター分の千円からのお釣りが小さな透明のビニール袋に入っていた。これも数十個用意しておくらしい。間違わないし、車を止めてからの無駄が少なくスマートである。小銭を探している運転手にイライラさせられることも無く、僅かであろうが事故に会うリスクも少ないに違いない。

ちなみに、この運転手の売上げは平均社員の2倍、仲間グループの売上げも通常の1.4倍あるという。個人タクシーではなく、法人タクシー会社に勤める運転手さんであったが、人によって企業業績が異なってくることを実感させられた。  皆さんも経験がおありだと思うが、下手な運転手や新人ほど時間はかかるしメーターは上がる。おまけに危険である。いつもなぜ運転技能や経験に区分された料金体系にならないのかと思う。ハイヤーにベテラン運転手が割り当てられるのは一理ある。

ビジネスモデルや製品競争力、景気など、企業業績を左右するものは数多くあると思うが、最後は人。当時、人事モジュールの責任者といっても、なかなか人財育成の効果や、社員のパフォーマンスがどのように企業業績に影響するかを証明することは難しかったので、肌で感じた神戸のタクシー運転手によるパフォーマンス事例は、私の人財マネジメントの原点となった。

「行政のリーダーシップ」 – 被災地復興 –

 東北の復興工事が随分遅れていると言われています。

 予算制度の障壁、地元利権との調整、被災した土地や企業の計画遅延など、簡単に前へ進めない状況があることはよくわかります。
 ただ、情けないのは、東京を含め、被災地以外の地域では、平然と工事が行われていることです。しかも誰が見ても今日・明日に実施しなければならない工事は少なく、予算消化のためなのか、とても理解できません。

 このような非常事態こそ、総理がリーダーシップを発揮し、困っている人々を助けるべきと考えます。通常のオペレーションをするだけであれば、リーダーシップは不要で、マニュアルがあればいいのです。素人考えですが、下記のような意思決定は取れないのでしょうか?

– ライフラインと安全保障に関わる工事以外は全て一旦凍結
– 凍結された工事のキャンセル料や変更費用を試算
– 多少費用増が発生しても、できる限り、被災地復興工事に振替
– 凍結できない工事の優先順位づけ
– 凍結された予算の審議と次年度以降優先順位への反映

 ダム建設や、築地市場の移転計画、その他遅延が発生している計画は沢山あるのですから、少しぐらい遅れても我慢できる意思決定は山ほどあります。

 まだ仮設住宅で困っている人、移転問題で悩んでいる人が沢山います。まずは日本の全ての英知とパワーを被災地復興に振り向け、通常のスピード以上で改善していくべきです。計画を変更するのですから、関連計画は狂い、効率や生産性は落ちます。しかしこれが痛みを伴う復旧ではないでしょうか。

 「予算制度はそんなに簡単ではない。」、「慎重に議論していかなければならない。」などの言葉はリーダーから期待しておらず、長期的な展望と人の痛みを理解し、リーダーしかできない意思決定していくことを切に望みます。

P.S.
この思い、野田首相を批判しているのではありません。むしろ真面目でひたむきな姿勢は評価できます。自分および自党のこと、選挙の雲行きしか考えない議員より、よっぽどマシ。誰が首相になっても大きく変われないのであれば、むしろ真面目な方にリードしてもらった方が安心です。この非常事態を強いリーダーシップで乗り切り、次に国際社会への問いかけや参画・貢献を行なっていけば、必ず各国から一目置かれます。

「新興国パワー2」 – ワインとカジノ(2) –

 G8入りを断った中国。新興国側に留まり、自国の成長を優先させるという戦略です。

 これは立派な戦略ですね。コントロールという表現が適切かどうかわかりませんが、成熟側について、自主規制や全体最適を目指す中にいるより、独自路線で個別最適を目指すほうが自国には有利です。弱っている日本、もっと学ばなければなりません。

 今回、ラスベガスの小型版と言われるリノ(Reno)を訪れる機会を得ましたので、レポートしたいと思います。

 リノは、米国ネバダ州北西部の商業・観光都市で、昔は金鉱・銀鉱で繁栄したようです。自称、“The Biggest Little City In The World”(世界で一番大きい小都市)と表現しており、何人かの方が、このメッセージを使いながら少し自慢げにRenoを説明してくれました。カジノが多く存在するメインストリートにも、可愛らしい看板にこのメッセージが書かれていました。

 以前から一度訪問したい街であり、カジノファンとしては、外せない場所だったのですが、ワンストップでたどり着ける場所ではないので、なかなか機会に恵まれませんでした。足としては、サンフランシスコ空港からレンタカーで向かったのですが、遠いこと遠いこと。米国のドライバーにとっては、普通なのかもしれませんが、日本からのフライトの後行程としては山道を含めタフな4時間ドライブでした。
カジノのマネージャが、「次回は、空港までの送り迎えと1日観光をアレンジするので、飛行機で来い。」と言うのがよくわかります。今回のように一人で来るのであれば、タホ国際空港を利用するのがお勧めです。

 新興国という観点でコメントすると、まずサンフランシスコ空港で見かける日本のパスポートが目立たなくなりました。以前は入国審査の列は、日本のパスポートを持った人々で一杯でした。実数では減っていないのかもしれませんが、とにかく中国・ベトナムを始めとするアジア諸国の人々が圧倒的に増えました。ビジネスで米国に来る中国人は以前から多かったと思われますので、観光目的の人が増えたと思われます。
一方、リノはどうだったかというと、ここは米国人の旅行者中心でした。リノで会った日本人はゼロ、日本以外のアジア人もそんなに多くなく、サンフランシスコとは大違いです。

 リノのカジノ、錆びれているという人もいましたが、なんのなんの、それなりに賑やかでした。もちろん少し古臭いカジノや人の少ないカジノもありますが、それはラスベガスもマカオも同じです。

 細かいトピックは色々ありましたが、全体的な印象を言うと、とにかく「フレンドリー」。これはディーラーだけでなく、カジノのマネージャやホテルの人々も徹底しています。街全体で意識していると思われます。私の宿泊していたカジノホテル、テーブルゲームのディーラーは、できるだけプレイヤーをファーストネームで呼びます。ディーラーが交代するときも、次のディーラーに名前を引き継ぎます。覚えるのは大変そうですが、後ろにいるカジノのマネージャもヘルプしながらこのオペレーションを続けていました。

 私が街全体と言っている理由は、他のカジノでも同じような努力が見られたからです。名前を覚える努力は、どこでもというわけではありませんでしたが、テーブルの電光表示板に、「Renoのフレンドリー・コンテストでno.1」という表示をしているカジノがあったり、プレイそっちのけで、世間話をするディーラーも少なくありません。

 また、Andyというディーラーは、とにかく色々な人から声をかけられ、挨拶されます。手捌きはプロフェッショナル、しかしコミュニケーションはゲストの雰囲気を見ながら適度な対応、親しみやすいディーラーです。外見はジャック・ニコルソンそっくりで、人気がある理由の一つかもしれません。かなりのプロフェッショナルと思ったので、経験を聞いてみると、25年間Peppermillというカジノのディーラーをやっていたそうで、8ヶ月前に私の宿泊しているカジノに移ってきたとのこと。人気ディーラーなので引抜かれたのかと思い尋ねると、なんとクビにされたらしい。悪いことでもしたのかと思いましたが、話を聞いてみると、どうやら周りの嫉妬や妬みのようです。誰かがマネージャに告げ口をし、マネージャも客と親しくし過ぎていることを快く思っていなかった模様です。しかし再雇用されていることや、新しい職場でも常連客から人気があることを考えると、悪事は働いておらず、事実のようです。

 解雇されても、直ぐに同じ街のカジノで職を見つけることができるのは、これもその人のエンプロイヤビリティ、つまり人財価値がある証拠ですね。

 P.S.
 前回コメントした遅延のプレムール・ワイン、無事届きました。新興国に優先されたものの、日本の業者さんは真面目。裏切ることなく契約金額で届けてくれました。届いたワインの価値は、契約価格の3倍以上です。