「新興国パワー2」 – ワインとカジノ(2) –

 G8入りを断った中国。新興国側に留まり、自国の成長を優先させるという戦略です。

 これは立派な戦略ですね。コントロールという表現が適切かどうかわかりませんが、成熟側について、自主規制や全体最適を目指す中にいるより、独自路線で個別最適を目指すほうが自国には有利です。弱っている日本、もっと学ばなければなりません。

 今回、ラスベガスの小型版と言われるリノ(Reno)を訪れる機会を得ましたので、レポートしたいと思います。

 リノは、米国ネバダ州北西部の商業・観光都市で、昔は金鉱・銀鉱で繁栄したようです。自称、“The Biggest Little City In The World”(世界で一番大きい小都市)と表現しており、何人かの方が、このメッセージを使いながら少し自慢げにRenoを説明してくれました。カジノが多く存在するメインストリートにも、可愛らしい看板にこのメッセージが書かれていました。

 以前から一度訪問したい街であり、カジノファンとしては、外せない場所だったのですが、ワンストップでたどり着ける場所ではないので、なかなか機会に恵まれませんでした。足としては、サンフランシスコ空港からレンタカーで向かったのですが、遠いこと遠いこと。米国のドライバーにとっては、普通なのかもしれませんが、日本からのフライトの後行程としては山道を含めタフな4時間ドライブでした。
カジノのマネージャが、「次回は、空港までの送り迎えと1日観光をアレンジするので、飛行機で来い。」と言うのがよくわかります。今回のように一人で来るのであれば、タホ国際空港を利用するのがお勧めです。

 新興国という観点でコメントすると、まずサンフランシスコ空港で見かける日本のパスポートが目立たなくなりました。以前は入国審査の列は、日本のパスポートを持った人々で一杯でした。実数では減っていないのかもしれませんが、とにかく中国・ベトナムを始めとするアジア諸国の人々が圧倒的に増えました。ビジネスで米国に来る中国人は以前から多かったと思われますので、観光目的の人が増えたと思われます。
一方、リノはどうだったかというと、ここは米国人の旅行者中心でした。リノで会った日本人はゼロ、日本以外のアジア人もそんなに多くなく、サンフランシスコとは大違いです。

 リノのカジノ、錆びれているという人もいましたが、なんのなんの、それなりに賑やかでした。もちろん少し古臭いカジノや人の少ないカジノもありますが、それはラスベガスもマカオも同じです。

 細かいトピックは色々ありましたが、全体的な印象を言うと、とにかく「フレンドリー」。これはディーラーだけでなく、カジノのマネージャやホテルの人々も徹底しています。街全体で意識していると思われます。私の宿泊していたカジノホテル、テーブルゲームのディーラーは、できるだけプレイヤーをファーストネームで呼びます。ディーラーが交代するときも、次のディーラーに名前を引き継ぎます。覚えるのは大変そうですが、後ろにいるカジノのマネージャもヘルプしながらこのオペレーションを続けていました。

 私が街全体と言っている理由は、他のカジノでも同じような努力が見られたからです。名前を覚える努力は、どこでもというわけではありませんでしたが、テーブルの電光表示板に、「Renoのフレンドリー・コンテストでno.1」という表示をしているカジノがあったり、プレイそっちのけで、世間話をするディーラーも少なくありません。

 また、Andyというディーラーは、とにかく色々な人から声をかけられ、挨拶されます。手捌きはプロフェッショナル、しかしコミュニケーションはゲストの雰囲気を見ながら適度な対応、親しみやすいディーラーです。外見はジャック・ニコルソンそっくりで、人気がある理由の一つかもしれません。かなりのプロフェッショナルと思ったので、経験を聞いてみると、25年間Peppermillというカジノのディーラーをやっていたそうで、8ヶ月前に私の宿泊しているカジノに移ってきたとのこと。人気ディーラーなので引抜かれたのかと思い尋ねると、なんとクビにされたらしい。悪いことでもしたのかと思いましたが、話を聞いてみると、どうやら周りの嫉妬や妬みのようです。誰かがマネージャに告げ口をし、マネージャも客と親しくし過ぎていることを快く思っていなかった模様です。しかし再雇用されていることや、新しい職場でも常連客から人気があることを考えると、悪事は働いておらず、事実のようです。

 解雇されても、直ぐに同じ街のカジノで職を見つけることができるのは、これもその人のエンプロイヤビリティ、つまり人財価値がある証拠ですね。

 P.S.
 前回コメントした遅延のプレムール・ワイン、無事届きました。新興国に優先されたものの、日本の業者さんは真面目。裏切ることなく契約金額で届けてくれました。届いたワインの価値は、契約価格の3倍以上です。

「新興国パワー1」 – ワインとカジノ(1) –

 プリムール・ワインという言葉をご存知でしょうか?

 いわゆるワインの先物買いです。ボージョレ・ヌーボーは採れたての新鮮な果実酒を楽しむもので、プリムールは出荷前の買い付けです。

 ボージョレ・ヌーボーが採りたてだとすると、一般のワインは半年後の翌年の春、そしてボルドーのプリムール・ワインは2年後ぐらいまで寝かせてから出荷されます。高級ワインは熟成と共に値段が上がりますから、先物買いをしておくと、割安に高級ワインが飲めます。投資対象にしている業者や人も存在します。

 私も約3年前に、ボルドーの五大シャトーワインを予約しました。契約書を交わし、ずっと待っています。しかし未だに届きません。2年間で出荷されるのが標準ですから、最初の予定では昨年2010年の11月に配送される予定でした。その後、予定が延びて2011年3月になったとの連絡が入ります。仕方なく待っておりましたが、7月になっても届きません。さすがにクレームを入れると、8月配送との返答がありました。

 遅延理由は、「新興国優先」ということで、お金に糸目をつけない新興国パワーに負けています。先物買いで、騙されている可能性もありますが、現実、日本は世界の中から無視される状態になりつつあります。オーストラリアの日本語ブームは去り、大学で教える外国語は日本語から中国語に主軸が変わりました。貿易政策や企業も、やはり中国の方が重要なお客様になりつつあります。
 「日本企業は値切りばかり言ってくるが、他のアジアの国は、とにかく物があれば売って欲しいという態度である」といったコメントも最近、聞きました。日本を通り過ぎることがパターン化しており、とても危機感を感じます。

 P.S.
 プレムール・ワイン、3年前に購入した金額の3倍になっています。(到着しなければ、馬鹿をみますが)
確かに確実な投資と思いました。元々、五大シャトーのワインは価格が高く、自分では購入しにくいので、安く購入できる方法を調べた結果ですが、今の価格だととても買えません。
 ちなみに、毎年テーマの絵が変わるこの銘柄、この年は新興パワーを感じさせる中国の画家が描いています。どの分野でも、新興国パワーは凄い!

「デジタルとアナログ2」 – デジタルの進化とアナログの良さ(2) –

 「デジタル化の波」 というほど人財マネジメントの世界は押し寄せていないものの、やはり徐々にデジタル化は進んでいます。

 まずは、オペレーション的な業務。人事異動、労務管理、目標管理、報酬管理などなど。1000人を超える企業では、デジタル化されていないと事務作業が大変です。さすがに給与計算や社会保険業務は自社でデジタル化されていない場合、アウトソーシングしていると思いますが、一部の手作業処理が残っているだけでも「やっていられない仕事!」だと思います。また外資系企業のように、ライン長が人事プロセスを処理する場合は、セルフサービス機能がラインにもスタッフにも提供されていないと、とんでもないペーパーワークが発生しますね。

 一旦覚えてしまえば、デジタル化は便利。コピー機能やレポート機能を駆使すれば、生産性は10倍以上だと思います。逆に、使いこなせなければ、生産性を落とし、事務作業ばかりで一日を終え、大切な仕事が回らなくなります。

 戦略的な人財マネジメント分野でのデジタル化。これがどの程度役立つかについては、意見が分かれると思います。

 もちろん、ツールとして割り切れば、あるに越したことはありません。例えば、タレント・マネジメント。一般に「9ボックス」と呼ばれるタレント図も自動的に分類されると、非常に便利です。シミュレーションもできて、視覚化されるので、特に組織内における相対的な人財マネジメントには威力を発揮すると思われます。

 日ごろ、素晴らしいと思っていた人も、デジタル化してデータで判断すると、「なんだこの辺か」という現実に気づいたり、伏兵というか、意外と高いポテンシャルを持っている若者が登場したりします。意外性があるということは、データによって気づきがあったことの証明です。

 意外性がない部分は、9ボックスの1から3のあたり、つまりローパフォーマーのゾーン。このゾーンは、日ごろより問題があると感じる人が、しっかりそのゾーンに納まっています。他の人の意見を聞いても、ここはブレません。つまり、それだけマネジメントからのアテンションも高く、適切な判断が下されていた可能性が高いといえます。「ITは気づき」のツールというのが私の持論。管理対象が多ければ多いほど、マネジメントとしてのアテンションは分散します。その時、その拡散したアテンションに対して警告してくれる機能は、やはり助かります。気づかずに、有為の人財を見過ごしてはいけません。

 自分の判断を入れず、デジタル情報だけで判断すると、人財マネジメントはとんでもないことになりますし、マネジメントの重要な任務を放棄していることになります。しかし、公平性と生産性の観点では、デジタル化の進展は望ましい方向です。

 タレント・マネジメントだけではなく、人件費のシミュレーションやコンピテンシー管理と連動した人財開発、業績管理と人財配置シミュレーションなど、デジタル化が効果を発揮する人財マネジメント領域は広がっています。デジタル・デバイドによって、取り残されないようにしましょう。

「デジタルとアナログ1」 – デジタルの進化とアナログの良さ(1) –

 ネットワーク・プレーヤーを購入しました。

 まだセットアップ中ですが、音楽の世界も進化が凄いと感じました。流れる音は、透明そのもの。高級オーディオや高価な携帯電話は、要所に金を使ったり、色々な贅を尽くしていますが、ノイズの大元は機械的な動きから発生します。

 例えばCDプレーヤーの回転、大きく雑音を発生させます。音源ソースは光学的に読み取るので、読み取れなかった部分はレーザービームを左右に動かしながら読み直したりします。補正できなかった部分はノイズになります。こういった機械的な部分をできる限り排除したものがネットワーク・プレーヤーです。このネットワーク・プレーヤー、機械的な装置部分が少ない分、圧倒的に故障も発生しないとお店の人が言っていました。なんと音源コンテンツはNAS(Network Attached Storage)、ネットワーク上のファイル・サーバーで巨大な音楽の倉庫となります。

 音源をNASに格納するためのRippingという作業は、色々な圧縮方式でファイルを変換していきますが、何百ものCDを変換する作業の生産性を考え、有償のRippingソフトウェアを購入しました。(26$) CDの曲情報やジャケットはメタ・データとしてインターネット上から自動取得してくれます。もちろん、曲のインデックス付けや検索もライブラリー化されるので手間無し。昔、ジャズ喫茶のマスターがタイプライターでインデックスを作成し、別のノートに曲単位で整理したのを見たときは感動しましたが、デジタル化の技は一瞬にしてこれを実現します。

 ルーター経由でネットワーク・プレーヤーがサーバーとなり、ネットワーク・ドメインを形成し、操作はWi-Fiを用いたi-padとなると、これは一大情報システムです。

 音楽の世界は、超アナログでした。レコード・プレーヤーはビニール盤に刻み込まれたデコボコを擦って音を出していたし、私が遊ぶギターにしても音合わせのチューニングはある意味いい加減。これはプロでも同じです。部屋の温度が上がれば弦は伸びるし、寒い外を持ち歩いてきたら、弦は縮んで高い音になります。湿気でボディは影響を受け、鳴り方が変わってきます。デジタル・チューナーで合わせても、弾いているときはぴったりの音程は存在しません。指のタッチや弦の弾き方で微妙に音程やトーンは変化しているのです。ピアノもコンサートホールによって、響き方がまったく違います。

 人財マネジメントにもデジタル化の波が押し寄せています。続きは次回。