「新興国パワー2」 – ワインとカジノ(2) –

 G8入りを断った中国。新興国側に留まり、自国の成長を優先させるという戦略です。

 これは立派な戦略ですね。コントロールという表現が適切かどうかわかりませんが、成熟側について、自主規制や全体最適を目指す中にいるより、独自路線で個別最適を目指すほうが自国には有利です。弱っている日本、もっと学ばなければなりません。

 今回、ラスベガスの小型版と言われるリノ(Reno)を訪れる機会を得ましたので、レポートしたいと思います。

 リノは、米国ネバダ州北西部の商業・観光都市で、昔は金鉱・銀鉱で繁栄したようです。自称、“The Biggest Little City In The World”(世界で一番大きい小都市)と表現しており、何人かの方が、このメッセージを使いながら少し自慢げにRenoを説明してくれました。カジノが多く存在するメインストリートにも、可愛らしい看板にこのメッセージが書かれていました。

 以前から一度訪問したい街であり、カジノファンとしては、外せない場所だったのですが、ワンストップでたどり着ける場所ではないので、なかなか機会に恵まれませんでした。足としては、サンフランシスコ空港からレンタカーで向かったのですが、遠いこと遠いこと。米国のドライバーにとっては、普通なのかもしれませんが、日本からのフライトの後行程としては山道を含めタフな4時間ドライブでした。
カジノのマネージャが、「次回は、空港までの送り迎えと1日観光をアレンジするので、飛行機で来い。」と言うのがよくわかります。今回のように一人で来るのであれば、タホ国際空港を利用するのがお勧めです。

 新興国という観点でコメントすると、まずサンフランシスコ空港で見かける日本のパスポートが目立たなくなりました。以前は入国審査の列は、日本のパスポートを持った人々で一杯でした。実数では減っていないのかもしれませんが、とにかく中国・ベトナムを始めとするアジア諸国の人々が圧倒的に増えました。ビジネスで米国に来る中国人は以前から多かったと思われますので、観光目的の人が増えたと思われます。
一方、リノはどうだったかというと、ここは米国人の旅行者中心でした。リノで会った日本人はゼロ、日本以外のアジア人もそんなに多くなく、サンフランシスコとは大違いです。

 リノのカジノ、錆びれているという人もいましたが、なんのなんの、それなりに賑やかでした。もちろん少し古臭いカジノや人の少ないカジノもありますが、それはラスベガスもマカオも同じです。

 細かいトピックは色々ありましたが、全体的な印象を言うと、とにかく「フレンドリー」。これはディーラーだけでなく、カジノのマネージャやホテルの人々も徹底しています。街全体で意識していると思われます。私の宿泊していたカジノホテル、テーブルゲームのディーラーは、できるだけプレイヤーをファーストネームで呼びます。ディーラーが交代するときも、次のディーラーに名前を引き継ぎます。覚えるのは大変そうですが、後ろにいるカジノのマネージャもヘルプしながらこのオペレーションを続けていました。

 私が街全体と言っている理由は、他のカジノでも同じような努力が見られたからです。名前を覚える努力は、どこでもというわけではありませんでしたが、テーブルの電光表示板に、「Renoのフレンドリー・コンテストでno.1」という表示をしているカジノがあったり、プレイそっちのけで、世間話をするディーラーも少なくありません。

 また、Andyというディーラーは、とにかく色々な人から声をかけられ、挨拶されます。手捌きはプロフェッショナル、しかしコミュニケーションはゲストの雰囲気を見ながら適度な対応、親しみやすいディーラーです。外見はジャック・ニコルソンそっくりで、人気がある理由の一つかもしれません。かなりのプロフェッショナルと思ったので、経験を聞いてみると、25年間Peppermillというカジノのディーラーをやっていたそうで、8ヶ月前に私の宿泊しているカジノに移ってきたとのこと。人気ディーラーなので引抜かれたのかと思い尋ねると、なんとクビにされたらしい。悪いことでもしたのかと思いましたが、話を聞いてみると、どうやら周りの嫉妬や妬みのようです。誰かがマネージャに告げ口をし、マネージャも客と親しくし過ぎていることを快く思っていなかった模様です。しかし再雇用されていることや、新しい職場でも常連客から人気があることを考えると、悪事は働いておらず、事実のようです。

 解雇されても、直ぐに同じ街のカジノで職を見つけることができるのは、これもその人のエンプロイヤビリティ、つまり人財価値がある証拠ですね。

 P.S.
 前回コメントした遅延のプレムール・ワイン、無事届きました。新興国に優先されたものの、日本の業者さんは真面目。裏切ることなく契約金額で届けてくれました。届いたワインの価値は、契約価格の3倍以上です。

「新興国パワー1」 – ワインとカジノ(1) –

 プリムール・ワインという言葉をご存知でしょうか?

 いわゆるワインの先物買いです。ボージョレ・ヌーボーは採れたての新鮮な果実酒を楽しむもので、プリムールは出荷前の買い付けです。

 ボージョレ・ヌーボーが採りたてだとすると、一般のワインは半年後の翌年の春、そしてボルドーのプリムール・ワインは2年後ぐらいまで寝かせてから出荷されます。高級ワインは熟成と共に値段が上がりますから、先物買いをしておくと、割安に高級ワインが飲めます。投資対象にしている業者や人も存在します。

 私も約3年前に、ボルドーの五大シャトーワインを予約しました。契約書を交わし、ずっと待っています。しかし未だに届きません。2年間で出荷されるのが標準ですから、最初の予定では昨年2010年の11月に配送される予定でした。その後、予定が延びて2011年3月になったとの連絡が入ります。仕方なく待っておりましたが、7月になっても届きません。さすがにクレームを入れると、8月配送との返答がありました。

 遅延理由は、「新興国優先」ということで、お金に糸目をつけない新興国パワーに負けています。先物買いで、騙されている可能性もありますが、現実、日本は世界の中から無視される状態になりつつあります。オーストラリアの日本語ブームは去り、大学で教える外国語は日本語から中国語に主軸が変わりました。貿易政策や企業も、やはり中国の方が重要なお客様になりつつあります。
 「日本企業は値切りばかり言ってくるが、他のアジアの国は、とにかく物があれば売って欲しいという態度である」といったコメントも最近、聞きました。日本を通り過ぎることがパターン化しており、とても危機感を感じます。

 P.S.
 プレムール・ワイン、3年前に購入した金額の3倍になっています。(到着しなければ、馬鹿をみますが)
確かに確実な投資と思いました。元々、五大シャトーのワインは価格が高く、自分では購入しにくいので、安く購入できる方法を調べた結果ですが、今の価格だととても買えません。
 ちなみに、毎年テーマの絵が変わるこの銘柄、この年は新興パワーを感じさせる中国の画家が描いています。どの分野でも、新興国パワーは凄い!

「デジタルとアナログ2」 – デジタルの進化とアナログの良さ(2) –

 「デジタル化の波」 というほど人財マネジメントの世界は押し寄せていないものの、やはり徐々にデジタル化は進んでいます。

 まずは、オペレーション的な業務。人事異動、労務管理、目標管理、報酬管理などなど。1000人を超える企業では、デジタル化されていないと事務作業が大変です。さすがに給与計算や社会保険業務は自社でデジタル化されていない場合、アウトソーシングしていると思いますが、一部の手作業処理が残っているだけでも「やっていられない仕事!」だと思います。また外資系企業のように、ライン長が人事プロセスを処理する場合は、セルフサービス機能がラインにもスタッフにも提供されていないと、とんでもないペーパーワークが発生しますね。

 一旦覚えてしまえば、デジタル化は便利。コピー機能やレポート機能を駆使すれば、生産性は10倍以上だと思います。逆に、使いこなせなければ、生産性を落とし、事務作業ばかりで一日を終え、大切な仕事が回らなくなります。

 戦略的な人財マネジメント分野でのデジタル化。これがどの程度役立つかについては、意見が分かれると思います。

 もちろん、ツールとして割り切れば、あるに越したことはありません。例えば、タレント・マネジメント。一般に「9ボックス」と呼ばれるタレント図も自動的に分類されると、非常に便利です。シミュレーションもできて、視覚化されるので、特に組織内における相対的な人財マネジメントには威力を発揮すると思われます。

 日ごろ、素晴らしいと思っていた人も、デジタル化してデータで判断すると、「なんだこの辺か」という現実に気づいたり、伏兵というか、意外と高いポテンシャルを持っている若者が登場したりします。意外性があるということは、データによって気づきがあったことの証明です。

 意外性がない部分は、9ボックスの1から3のあたり、つまりローパフォーマーのゾーン。このゾーンは、日ごろより問題があると感じる人が、しっかりそのゾーンに納まっています。他の人の意見を聞いても、ここはブレません。つまり、それだけマネジメントからのアテンションも高く、適切な判断が下されていた可能性が高いといえます。「ITは気づき」のツールというのが私の持論。管理対象が多ければ多いほど、マネジメントとしてのアテンションは分散します。その時、その拡散したアテンションに対して警告してくれる機能は、やはり助かります。気づかずに、有為の人財を見過ごしてはいけません。

 自分の判断を入れず、デジタル情報だけで判断すると、人財マネジメントはとんでもないことになりますし、マネジメントの重要な任務を放棄していることになります。しかし、公平性と生産性の観点では、デジタル化の進展は望ましい方向です。

 タレント・マネジメントだけではなく、人件費のシミュレーションやコンピテンシー管理と連動した人財開発、業績管理と人財配置シミュレーションなど、デジタル化が効果を発揮する人財マネジメント領域は広がっています。デジタル・デバイドによって、取り残されないようにしましょう。

「デジタルとアナログ1」 – デジタルの進化とアナログの良さ(1) –

 ネットワーク・プレーヤーを購入しました。

 まだセットアップ中ですが、音楽の世界も進化が凄いと感じました。流れる音は、透明そのもの。高級オーディオや高価な携帯電話は、要所に金を使ったり、色々な贅を尽くしていますが、ノイズの大元は機械的な動きから発生します。

 例えばCDプレーヤーの回転、大きく雑音を発生させます。音源ソースは光学的に読み取るので、読み取れなかった部分はレーザービームを左右に動かしながら読み直したりします。補正できなかった部分はノイズになります。こういった機械的な部分をできる限り排除したものがネットワーク・プレーヤーです。このネットワーク・プレーヤー、機械的な装置部分が少ない分、圧倒的に故障も発生しないとお店の人が言っていました。なんと音源コンテンツはNAS(Network Attached Storage)、ネットワーク上のファイル・サーバーで巨大な音楽の倉庫となります。

 音源をNASに格納するためのRippingという作業は、色々な圧縮方式でファイルを変換していきますが、何百ものCDを変換する作業の生産性を考え、有償のRippingソフトウェアを購入しました。(26$) CDの曲情報やジャケットはメタ・データとしてインターネット上から自動取得してくれます。もちろん、曲のインデックス付けや検索もライブラリー化されるので手間無し。昔、ジャズ喫茶のマスターがタイプライターでインデックスを作成し、別のノートに曲単位で整理したのを見たときは感動しましたが、デジタル化の技は一瞬にしてこれを実現します。

 ルーター経由でネットワーク・プレーヤーがサーバーとなり、ネットワーク・ドメインを形成し、操作はWi-Fiを用いたi-padとなると、これは一大情報システムです。

 音楽の世界は、超アナログでした。レコード・プレーヤーはビニール盤に刻み込まれたデコボコを擦って音を出していたし、私が遊ぶギターにしても音合わせのチューニングはある意味いい加減。これはプロでも同じです。部屋の温度が上がれば弦は伸びるし、寒い外を持ち歩いてきたら、弦は縮んで高い音になります。湿気でボディは影響を受け、鳴り方が変わってきます。デジタル・チューナーで合わせても、弾いているときはぴったりの音程は存在しません。指のタッチや弦の弾き方で微妙に音程やトーンは変化しているのです。ピアノもコンサートホールによって、響き方がまったく違います。

 人財マネジメントにもデジタル化の波が押し寄せています。続きは次回。

「高品質の秘密」 – 品質の日本 –

 某自動車メーカー、米国でバッシングを受け大変な状況になっています。品質に自信を持っていただけに、非常に悔しい想いをしているに違いありません。対応の不味さと相俟って、いまだ収束の方向に向かっていません。

 あるコンサルタントが、「これは必ずケーススタディになる。」と言ったように、品質管理問題と事故が起こったときの対応事例になると思われます。企業戦略、製品戦略、品質管理プロセス、コスト管理、リスク管理、パブリックリレーションなど、非常に多岐にわたる課題が含まれています。

 私もコンピューターメーカーに勤めていますので、品質は大きな重要テーマです。ハードウェアにおいてもソフトウェアにおいても品質の問題や改善は絶えることのないテーマです。

 一方、過剰品質という言葉があります。日産自動車にカルロス・ゴーンさんが派遣されたとき、真っ先に指摘した項目の一つは過剰品質です。「超高級車と低価格車の両方に、同じウィンドウガラスが取り付けられているのはおかしい。」、「ライトも基準値以上の明るさは、どこまで必要か。」 品質問題はよく理解できますが、高品質はコストも当然高くなります。

 これは最近、あるソフトウェア会社の社長から聞いた話です。

 「日本の品質への期待値を米国に伝え、ソフトウェアのバグについてレポートしても、データが壊れるとか本番システムがダウンするような問題は別として、相手にしてもらえなくなっている。多少のバグがあっても、米国では大騒ぎにならないし、中国やインドはそんなことに関係なく売り上げは伸びている。」

 相手の主張も、もっともです。日本の場合、装置を届けるための外装に傷が付いていたり、外箱に汚れがあると、「こんなものはお客様に届けることはできない。」と海外まで送り返しますが、「中身に支障がなければ、問題ない。」と拘らない国もあります。

 ここに日本の、高品質の秘密があるのですが、前回書いたような几帳面で真面目な性格と、品質に対するプライドが日本人の心の奥底にあるからです。大昔からそうであったかどうかはわかりません。ただし戦後日本が高度成長したときの、モノづくりに対する拘りと品質に対するプライドはしっかり日本人のメンタリティに刻み込まれています。このメンタリティがなければ、高度成長はあり得ませんでした。

 倒産したGM、品質テスト項目数は日本のメーカー以上だったと言われています。重要なのは、その内容。きめ細かさや欠陥品を見逃さない姿勢、検査する人のメンタリティに差があったのではないでしょうか。マニュアルに沿った、時間賃金の世界での表面的な検査では、経験がものを言う微妙なエラーは見つけることができません。エラーの見落としがあっても、「自分はマニュアルどおりにやった。」と主張します。海外の工場に、改善依頼を何度も行っても、なかなか相手にしてもらえなかった経験があります。日本の電気メーカーの工場、表玄関の芝生は綺麗に手入れされており、そこには「品質のXX」という看板が立てられています。少なくとも私がお付き合いしている日本の製造業には品質に対するプライドがあり、欠陥品を造ったり、見逃しては「恥だ」というメンタリティがあると思います。冒頭の事故、設計やプログラムのミスはグローバルなエラーでしたが、ペダルについては、日本で製造されたペダルから問題は発生していないとのこと。

 P.S. 
昔の話ですが、メキシコで製造されたコンピューター。動かないと中を開けたら、ファーストフードで有名なハンバーガー店の包み紙が出てきたことがあったそうです。過剰品質とのバランス問題もありますが、「恥の文化」も捨てたもんじゃありません。

「仕事の共同体」 – 仕事のコンテナー –

 仕事とのめぐり合い、色々な形があります。皆さんはどのように現在の仕事に就きましたか?

 いつも思うのが、会社は電車に似ているということ。そう、仕事のコンテナーなのです。

 電車は線路の上を走るので、方向性は決まっているが、時々路線がスイッチされます。各駅停車もあれば、新幹線のような超特急もあります。そう言えば、国家公務員のエリートコースを「超特急」と言いますね。この路線、コンピューター制御の発達で、発車後に路線を変えたり、運行時刻を変えたり、予定を組み替えたりできるようです。頻繁に変えるのは限界があると思いますが、企業方針を変更するのと同じですね。公的資金を受けることなどは「緊急停止」です。本業を取り違え、脱線する企業も多いこと。乗客を詰め込みすぎ、満員電車もしくは予定していた乗客より多くの人が乗っているときは、強制的に下車してもらうこともあるでしょう。不正を行ったときの退場もしかりです。

 日本は正確な列車の運行で有名。時刻どおり運行できる国は、社会が安定しており、信用度の高い国。比較的運行が安定している韓国ですら、5分以内は遅延と見做さないと公表しています。遅延は20分以上という国もある中で、新幹線の正確さは驚異です。1分以上であれば大クレームとなります。日本人の仕事の仕方が顕れています。

 一方、社員は、一度乗車したらそのまま一生同じ電車で過ごす人もいれば、何度も乗りかえる人もいます。電車を会社と考えると、色々な人が乗り込んできます。ずっと乗っている人もいれば、すぐに降りてしまう人もいます。車両を移ることは、企業内での異動となり、同じ電車であっても新たな刺激とチャレンジが加わります。

 同じ車両に乗り合わせた人は、仕事の仲間。電車の正常な運行に対して責任を持つ共同体です。共同体の中は、通常グループ分けされその役割も分担されています。グループには管理職というリーダーが存在し、グループの運営を任されています。運転手は舵取りをする執行役社長で、車掌は取締役会といったところでしょうか。共同体においては、仲の良い人もいればあまり良くない関係もありますが、時に社内(車内)恋愛や結婚があったりします。「電車男」は、掲示板が爆発し、ドラマ化されてしまいました。

 いずれにしても電車は、「仕事のコンテナー」だなあと思います。魅力的な仕事と報酬で人財を集め、長期的に、きっちりした方向性で運行している電車がエクセレント・カンパニーなのです。

 最近は女性専用車両があって、ややこしい。これはジェンダー差別?

「格差社会」 – モチベーション・マネジメント –

 久しぶりにイギリスを訪れました。トランジットでのヒースロー空港を除けば、実に20年ぶりです。

 ロンドンの市内は大きく変わったとは思えませんでした。大きく変わったのは物価。一言で言えば異常です、日本の給与では生活できません。逆に発想すると、日本の国力が衰えた証拠であり、GDPが18位になったのも納得できます。来年は、いよいよOECDの中で下流層入りです。日本の経営者の方々、グローバリゼーションに取り残され、「失われた20年」になりつつあることに気づいているのでしょうか?

 しかし、地下鉄は一駅でも1000円、タクシーはあっという間に5000円という物価では辛いものがありますね。米国の地方から来た人は、3倍の物価と言っていました。展示されている中古車の価格表を見ても、いわゆる高級車の部類は、1000万円を超えるものばかりで、街中が小さい車で溢れる理由は、道の狭さだけではありません。不動産価格も驚くばかり。どうやって、みんな生涯賃金レベルの家を買えるのでしょう、不思議でなりません。今のイギリスは、我々外国人からみた物価の高さだけではなく、イギリス国民の賃金がそれほど上昇していないことも大きな問題になりつつあるそうです。

 宿泊したホテルの場所はやや郊外のSunningdaleというところです。王室を現す「ロイヤル」が付くだけあって、ウィンストン・チャーチルが利用した由緒ある歴史を感じさせるホテルです。ウィリアム王子も近所に住んでいるとのことでした。ゴルフの世界では有名な、’The Open’が開催されるだけあって、アーニー・エルスやコリン・モンゴメリーの豪邸が美しいゴルフ場の中に佇んでいます。実質1日の滞在なので、残念ながらゴルフどころではありませんでしたが。

 上記のような場所や歴史を説明してもらう中で感じたのは、格差社会と階級。差別は明らかに存在しているのです。「庶民」は、別の民族のような感覚で説明されます。閉じられた世界の中で、生活レベルに枠をはめられてしまうと、それが当たり前になり、差別ではなくなる、あるいは差別を感じなくなるのかもしれません。レベルが上の側も、下の側も閉じた世界の中で受け入れてしまうので、彼らにとって差別ではないのでしょう。

 ビジネスの世界における格差、意識としてはあからさまではなく、かなり「マシ」だと思いますが、この階級意識は逆にモチベーション・マネジメントをし易くしていると思います。なぜならば、職種や職業、職務レベルにおいて格差があること自体に疑問を感じないからです。格差があっても、それは別の世界のことと割り切れば、悔しさも羨望も出てきません。悪く言えば、あきらめに近い感覚ではないでしょうか。私がモチベーション・マネジメントの易しさと言っているのは、閉じた世界の中においてマネジメントしていけばいいからです。

 「バスに乗り遅れたくない性格」の日本人。「格差がないこと」がおかしいと感じる国民性とは逆に、「格差がないこと」に安心する農耕民族においては、こちらの方が難しいモチベーション・マネジメントが存在していると思われます。最近は、「差」がでてきましたが、一昔前は、同期入社で給与に差がつくと、複雑な気持ちになったはずです。「差」が付くと妬む文化の根っこはここにあるのかもしれません。

 P.S. 
トイレで用を済ませると、ペーパータオルを用意して、身なりの良いおじさんが待っています。トイレに入った瞬間から水道の水を出しっぱなしにして(節約して欲しいです)、手洗い石鹸を勧め、これはチップに対する大きなプレッシャー。俄かジェントルマンにならざるを得ず、ポケットの小銭を気前よく渡していましたが、イギリスのポンド、コインでもソコソコ大きな価値があります。色々な種類があるので、幾らかわかっていませんでしたが、後で1ポンドや2ポンドのものだったと気づくと、ペーパータオルのおじさんに、2回も1000円以上のチップをあげていました。経済大国の日本が健在であることに貢献?イギリスに渡航する前に、コインの学習をしておきましょう。(当たり前?)

「米国人財レポート(2)」 – 人財マネジメント2.0(2) –

 皆さんにとって、「良い企業」というのはどのような定義になるでしょうか?

 ある金融サービス大手の方が話していました。彼は大学を卒業するとき、どんな企業に就職すればいいかを母親に相談しました。彼女は、2つの選択基準をアドバイスしたそうです。

– 雇用主がよいこと
– 良いリタイア(引退)ができること

この「良い引退」には色々な意味がありますが、不安なく退職後を過ごせることです。これは必ずしも1社における終身雇用での退職を意味するわけではなく、キャリアアップを経て、最後に良いリタイア(引退)を迎えることが重要です。現実に、この話している人も6つ目の会社/仕事であると言っていました。ちなみに平均的アメリカ人は、11の仕事を経験するそうです。

1つの会社で長年勤め、退職日を迎えるイメージは比較的し易いのですが、複数の会社で勤めながら最後に自分のリタイアをイメージすることは、意外と難しいものだと感じました。日本だと、「良いリタイアを迎えること」が会社選びの基準になることは結構少ないと思いませんか。「安定している」とか、「企業年金がしっかりしている」ということは、それに近い発想だと思いますが、若いときにリタイアメントを意識することはなかなか難しいです。

上記のような感想を持った帰りの飛行機の中、隣は上品な初老の女性。これからタイに行くらしい。世界各国を旅行しており、つい2ヶ月前にリタイアしたとのことでした。大学でスペイン文学を教えていたらしく、亡くなった旦那様も大学教授だったとのこと。のんびり旅行、余裕があって羨ましい限りですが、利子だけで食べていけると言っていました。教員の年金制度も恵まれているらしく、おまけにニューヨークの5番街の近くのアパートメントで暮らしているそうです。

羨ましがったら、「まだ遅くはない、自分も40歳代半ばから本格的に準備をし始めた。あなたはまだまだ若いんだから、きっちり計画することが大切。」とアドバイスされました。

最近銀行に行ったとき、『団塊世代のリタイアメント白書』というパンフレットが置いてあったので、思わず手にとりました。そこには「退職後の6つのリスク」が書かれています。インフレリスクや医療・介護のリスク、これらは理解し易いのですが、「そうかー」と思ったのは「長生きリスク」。長生きもリスクなんですね、リタイアメントを設計できていない人にとっては。

「米国人財レポート(1)」 – 人財マネジメント2.0(1)-

ある人財開発企業のユーザー会がサンフランシスコで実施され、参加してきました。いくつか気づいた点をレポートします。

 このユーザー会、参加者は600名程度ですが、人の育成に力を入れている一流企業ばかり。またその中でもCLOや人財育成の責任者が多く参加するので、世界の人財開発の流れがよく理解できます。70のセッションは、素晴らしい事例の集まりでした。

 私が聞いたメッセージの中で、印象に残ったものをサマリすると次のものになります。
– スキルを持った労働力は不足し、タレントがフォーカスされる時代になった
– 中国とインドの存在感が欧米に認知され始めた、日本はもはや視野から外れ始めた
– コミュニティ無しに、組織の成功はない
– エンゲージメントの重要性が認識された
– 「学習」は企業にとってのDNAである
– ハイ・パフォーマンスの文化とビジネスとしての成果が求められる
 

 社会の構成、働き方が大きく変わりつつあります。

在宅ワーカーが当たり前になり、会社で過ごした時間より、貢献した成果が求められます。一旦退職した人が別のスキルを持って、また会社に入ってきます。(ブーメラン・ピープルと名づけられていました)いわゆる海外版団塊の世代が退職し、子供のときからパーソナルコンピュータを与えられた世代が社会にでてきます。数年後、世界で一番英語を話す国民は中国人になってきます。コラボレーションはトップダウンではないところから生まれ、そのコラボレーションを支えるのはWeb2.0の技術。

「社内SNSを導入していますか?」という問いに対して、Yesと答えた企業はまだ少数派であったが、インフォーマルラーニングやコラボレーションは無視できない流れと言えます。B.G.これは’Before Google’というキーワードで、インターネットというとんでもないデータベースの宝庫と検索エンジンによって仕事のあり方も大きく変わりました。人財マネジメントはより複雑になりますが、「見える化」とタレント重視の方向性は間違いありません。

P.S. 
セッションででてきたメッセージの1つ。「2010年、結婚する人の8分の1はネットで知り合ったカップル」と予測されています。

これは実際最近あった出来事ですが、ある都内の高級ホテル。最上階のレストランで食事をしていたら、隣は妙齢のカップル。若者という時代は二人とも通り越しています。高価な身なりに、見栄の張った会話。席のレイアウトが近いので、嫌でも会話が聞こえてくるのですが、どう考えてもネットで出会い、お互いを確かめ合っている雰囲気。「私は甘えるタイプ、あなたは?」という感じです。二人とも財産がソコソコあることを自慢しています。この後どうなるのか?気になってしまい、食事が終わってもなかなか席を立てません。隣では「もう一杯飲んでもいいですか?」が繰り返されています。見栄の張り合い、とっても疲れます。最後は馬鹿らしくなって、隣のカップルの顛末を追いかけるのを諦めましたが、B.G.では考えられなかった事象ではないでしょうか。

富士ロックフェスティバルというイベントがあります。知人のミュージシャンは、車で出かけますが、一人だとガソリン代と高速道路料金がもったいないので、SNSで一緒に行く人を探すそうです。驚くのは、携帯電話でSNSにアクセスすると、あっという間に同乗者が集まって、行きも帰りもバラバラの人々で仲良く往復したとのこと。

ダボス会議でも取り上げられるWeb2.0のパワー。コラボレーションは人財マネジメントにおいても無視できません。