「経営統合3」 – ラーメン店の小さな変化 –

 経営統合は大きな変化ですが、小さな変化も「生き残り」を助けています。
 ある経済誌の記事に大変興味深いものがありました。

 有名なラーメン店、40年間、親子2代の伝統を守ったお店です。常連客は、「昔ながらの変わらぬしょうゆ味」を目当てに通い続けます。

 面白いのは、店主のコメントです。「同じ味でやっていたら潰れています。40年前と同じ味だったら、不味くてとても食べれません。」客の好みの味は、時代と共に変化するし、より良い味を求めて客が気づかないように味を変えているとのことです。

 「伝統」と「継承」。 「継承」の本当の意味は、「そのまま引き継がれる」だけではないような気がします。

 まず、一般的に思い浮かぶのは、伝統あるものをそのまま保存、引き継いでいくこと。もう一つは、伝統あるものを環境にあわせながら、アクティブな状態を維持していくこと。言葉の意味がよくわからなくなってきましたが、「継承」というのは、ただ単に同じ状態で保存しておくことではないということに気づきました。

P.S. 
小さな変化は時間軸だけではありません。時代の流れがタテの流れだとすると、地域の流れはヨコの流れ。同じメーカーのカップ麺、地域によって味を変えています。タイヤのゴム質も、走る地域によって材質を変えているし、女性の下着も緻密に研究されています。

 私もラーメンは大好き、なかなか麺もスープも満足というお店はありませんが、今後、時代の変化を考えているラーメン屋さんも意識してみたいと思います。今日はたまたま、岡山でラーメンを食べてきました。岡山も、ラーメンの美味しいところだったのですね。

「経営統合2」 – ゴルディアスの結び目 –

 経営統合、「過去のしがらみ」を断ち切る良いチャンスです。

 買収される企業や組織、かつてはエクセレント・カンパニー、多くの場合一世を風靡した時代があったことでしょう。買収されたり、経営統合の対象になるということは、価値がある証拠です。コア・コンピタンスがあれば、戦略を変えたり、プロセスを修正することによってV字回復する可能性があります。

 何度も書いているように、どのようなエクセレント・カンパニーでも市場適応できなければ、朽ち果てていきます。エクセレントから普通の会社に、普通の会社からダメダメ会社に。「エクセレントなやり方を変えていないのに?」と言っても、周囲の環境が変わっていきます。

 従業員は馬鹿ではありません。市場の変化を読み取り、自分達も変わらなければならないと認識しています。しかし、なぜ変われないのか?

 それが「過去のしがらみ」です。歴史は人を育て、プロセスをつくり、人や企業の関係を構築していきます。できあがったものには価値がありますが、時代とともに、その関係性は複雑になっていきます。BというプロセスはAというプロセスを前提としているので、Aが存在しなければBというプロセスは成り立ちません。そのAというプロセスを熟知する人はCという人なので、Cという人は不可欠になってきます。CさんにとってAというプロセスを提供することは自分の価値なので、積極的には他人へ伝授しません。BというプロセスにはDやEという他のプロセスも関係していたとしたら、Bの変更は容易ではありません。

 企業の歴史というものは、上のようなしがらみの連続です。至るところに、「過去のしがらみ」が積み上げられ、これがゴルディアスの結び目になっているのです。フリジア王になったゴルディアスが、誰にも解けない複雑な結び目を作って牛車を縛りつけました。これがゴルディアスの結び目ですが、近くにいる村人達は、頑張っても解くことができません。また、どうしてこのような結び目ができたのか、歴史があるとそう簡単には解明できません。同じ文化の中で育ってくると、結び目の解き方がわからなくなってきます。

 経営統合のタイミングはこの「過去のしがらみ」を解く瞬間です。一刀両断に、過去のプロセスを断ち切ってしまうアレクサンドロス3世なのです。しがらみを感じていては、迷いや固定観念が入り、プロセスを断ち切れません。大変な痛みを伴いますが、ゴルディアスの結び目を解く唯一の方法かもしれません。時には一刀両断、新しい目で変革が必要です。

「経営統合1」 *経営統合(人)

 経営統合、今回は「人」にスポットを当ててみたいと思います。

 PMI、聞いたことありますか?

 Post Merger Integrationの略で、買収後の経営統合の後、成功裏に統合効果を出していくことを目指すプロセスの総称です。

 そもそも企業文化の異なる会社や組織が統合するわけですから、そう簡単には成功しません。赤字企業を除き、買収時には株主価値に加えて、数10%のプレミアを付けることが一般的ですから、そのプレミア以上のシナジー効果が求められます。

 そもそもその前に、経営統合の目的を明確にすることが重要です。目的は下記のように色々あります。
– 企業規模の拡大(売上、市場、店舗、R&D)
– 顧客の獲得
– 競合潰し
– 人財の獲得
– 新たなビジネスモデルの獲得、もしくは補完
– 知的財産(IP)

 上記の中で、競合潰し、または特許など切り分けできる、明らかに企業所有の知的財産を除けば、「人」の役割はどの項目にも大きな影響を与えます。経営統合の成功と失敗は、人財のスムースな吸収が半分以上の鍵であると言っても過言ではありません。実際、企業買収を行ったものの、買収後に優秀な人財は誰もいなくなって、企業価値が大きく減少してしまうことは少なくありません。競合潰しの敵対的買収であれば、それも想定内かもしれませんが、支払う対価は想像以上に重荷となります。

 企業文化の差異を考えながら、人事制度の相違・格差を吸収させ、働く人のモチベーションを維持していく、なんと難しいプロセスでしょう。「企業は人なり」がまさしく露出することになります。置き換え可能な人達の集まりでは、この難しさはありませんが、ROAの高い企業は必ず「人財」を抱え、活かしています。
 買収側が、「人財を活かす」という発想を持っていること。これは大前提です。トップ・タレントを逃さない様々な仕掛けもあります。一方、重複部門や機能はリストラの対象にもなります。

 私の経験から言うと、マネジメントと従業員、両方のマインドがCSFとなります。どちらの場合も、本人達にとって変化ですから、この変化をいかに早く受け入れることができるかがポイントとなります。

 マネジメント、つまりリーダーは変化をドライブしていくこと、チェンジ・エージェントになることが求められます。自ら変化を創っていく気持ちが必要です。もちろん、変化させるだけではプロセスの破壊になるリスクが大きいので、既存のプロセスをどのようにスムースに移行、変化させていくか考えながらのチェンジ・エージェントにならなければなりません。

 一方、従業員は、この変化を楽しむ、受け入れるための工夫をするという気持ちでしょう。「しがらみ」があって、人はなかなか変われないもの、皆さんも実感しているのではないでしょうか。経営統合のような外圧がかかる良いタイミングに、自分と仕事を変化させるのです。既存の価値観とは異なるプロセスを受け入れることになるので、大変なストレスですが、変わらなければ化石化、カラパゴス化してしまうリスクが残ります。