「ベンチャー企業のスーパーレディ達」 – can do attitude –

今回はベンチャー企業におけるスーパーレディ達を紹介したい。
外資系ベンチャー企業で活躍するスーパーレディ達もなかなかのものである。完成しているところ、未熟なところ、人間なので両面併せ持っているのは当然であるが、基本的には尊敬できる人々であった。リスクの多いベンチャーで頑張れる人財そのものが貴重である。

まずはMさん。MBAホルダーで利酒師(ききざけし)、将来はお洒落な飲み屋開業を狙っているらしいが、現在はシニアコンサルタント。製品知識では誰にも負けない。韓国のプロジェクトを見事に納めたグローバルプレーヤーでもある。米国在住の時にこのベンチャーを知り、日本へ帰国後応募してきた稀有の人財。当初はこんなベンチャーに入社してしまって、大いに後悔したらしい。真面目な性格で、いい加減な私はいつも叱咤されている。

次にNさん。日経ウーマンにも登場したバイリンガル人財である。とにかく素晴らしい点はプロアクティブなこと(先手必勝)。経験はまだまだかもしれないが、自分で考え、自分で物事を進めていく姿勢を持っている。「前例がない」、「ルールがない」と止まっている人はどんどん置いていかれる世の中である。そんなことを言っていると、ベンチャーではとても務まらない。ここまで書くと、なんでも勝手にやってしまう野放し状態に聞こえるかもしれないが、しっかり報告し、レビュー・ミーティングも自分でセットしてくれる。「びっくり癖」と呼ばれているが、なんでも驚くのでとにかくわかり易い。

コンサルタントのAさん。とにかくセンスが良い、センスの良さは、資料にはっきり現れる。見やすく美しい。こちらはいくら努力してもソコソコの出来上がりにしかならないが、Aさんの資料は見る気にさせる資料になる。クライアントに対する説明も、要点を得たもので、わかり易い。これも1つの才能だと思う。昔、私もコンサルティング技法を学んだとき、「Talk Net(簡潔に!)」を教えられた。ダラダラ説明したあげく、何を説明したいのかよくわからないケースは最悪だ。

もう一人のMさんも独自の世界を持っている。学会活動や論文記述が大好きである。なんとお祖母さんの兄が、日本のテレビの父と呼ばれる高柳健次郎氏だそうである(「イ」を映した発明者)。これはただ者ではない。自宅には多数のコンピュータを接続し、学習効果の因子分析を行っている。Sabaからコンピテンシー・アセスメントのツールがでてきたら、それはMさんの研究成果である。キャリアカウンセラーの有資格者でもあるので、将来に不安がある方は相談してください。

当初約束の2年を過ぎ、ベンチャーを卒業していったが、3ヶ国語を話すLさん。高い交渉能力とパワーは、弱い立場の日本を世界に認めさせた。とにかく個性的、よくコンサルタントで印象が薄い人はダメと言われるが、集団で訪問しても間違いなく一番目立つ。頭の回転の速さは、ピカ一、大学も大学院も特待生である。何か調査を命じたとすると、どこから見つけてきたのかというぐらい適切な情報を提供してくれる。しかも単なる情報の集まりだけでなく、エグゼクティブサマリーやファインディング、ケースによっては、付帯意見というか自分の推奨(リコメンデーション)がまとめられたレポートが指示もしていないのに報告される。とにかく仕事が早く、普通の人の2倍、能率の悪い人の10倍と言っても過言ではない。

文句も人一倍だが、土日のどちらかは働いていたほど仕事熱心。このような高パフォーマンスを出す反面、他の人の机まで雑巾がけしている人財であった。

印象に残っているのは、米国でセールストレーニングを受けていたときのこと。確か交渉技術やコミュニケーションがテーマだったと思う。ロールプレイをやり取りし、みんなインストラクターの話術に負けてしまう。ところがLさんだけは、素早く流暢な英語で切り返し、長いやり取りの末インストラクターが両手を挙げてギブアップ。世界から集まった60人程の外国人が大拍手、すごい!
私は単なるおっちょこちょいだが、不思議と私のことを今でも尊敬してくれている。

こういったベンチャーのスーパーレディ達に共通するココロ、それは「can do attitude」。たまに採用基準の職務記述に記載されているが、「とにかくやってみよう精神」である。チャレンジもしないうちから、色々言い訳したり、自分の閉じた世界での推測で「うまくいかないと思うので….」決めつけてしまい、前進しない人がいる。「ノー」というのは簡単、言い訳けを考える暇があるのなら、どうやって無理難題を解決するかを考えるべきである。

「ホワイトカラー・エグゼンプション」 – 時間ベース労働と成果ベース労働の選択と提言 –

日本版ホワイトカラー・エグゼンプションは、以前通常国会への提出が断念されたままである。グローバル競争に対する日本国民の平和ボケ、政府の説明不足、成果主義後進国という事実が如実に表れている事象である。

まず第1点、グローバル競争下において、日本人ホワイトカラーの生産性の低さはよく指摘される事項である。私自身もそれは非常に感じる。

ダラダラした会議、リスクを取らないリスク、時間軸のないビジネス、事象を語るだけで対策が出てこない管理職、イニシアティブの弱いリーダー。海外で会議に参加すると、何か問題があった場合「お前はどうしたい?(どのような対策を何時までに取るのか?)」と必ず聞かれる。「そこのところはよく慎重に検討して....」なんて答えは答えとして認めてもらえない。もちろん個人レベルの比較ではないので、一概にコメントできないが、同意していただけるグローバル・プレーヤーは沢山いると思う。ビジネスを日本という枠にとらわれず考えていくとき、生産性の高い連中と戦っていかなければならない。その時意識しなければならないのはスピードと成果の質である。必要とした時間ではない。日本版ホワイトカラー・エグゼンプションは時間軸を伴った成果に目を向ける絶好のチャンスであったと思う。残業代削減のための悪法だと考えるのは、曲がった見方である。

例えば、ホワイトカラーだけでなく製造ラインにおいても生産性を謳えないわけではない。1分間に5個製造するラインであれば、1時間300個を目標成果とすればいいのである。成果物ベースで評価するとすれば、それより早く終わっても、遅く追加の時間がかかっても給与は同じでよい。早く終わった分には、生産性が高かったということで、特別手当をつけるぐらいの勢いが欲しい。この適用は全ての業務、職種ではなく、もちろん警備員のような、存在すること自体が付加価値をもたらす業務もある。これは対応した時間で評価すべきで、偶発性を伴う「犯人を3人見つけること」を目標成果とするわけにもいかない。

次に2点目として、政府の説明不足、説明下手を指摘したい。まずエグゼンプションという単語を理解できる人がどの程度いるのかを考えて欲しい。米国には「W4フォーム」という人事関連の申請書等があって、私も「そこにはそんな単語があったなあ。」というレベルの記憶しかない。野党からわかりやすい「残業ゼロ代制度」などと表現されて、こちらの方が認知度が高まってしまった。主婦の会話を聞いていても、「あれって残業代を無くす制度だよね。」と真剣に会話されていて、あきれんばかりである。生活費(生活残業費?)が削られると主婦にとっては一大事、当然国民は反対モードになる。  過労死問題も議論されているが、それは残業代を支払っても同じ問題が残るはずであるし、そもそも自己管理が現代のビジネスパーソンの基本である。逆に家庭や趣味重視のライフスタイルが有っても良い。

それでは今後日本でどのように成果型の働き方を推進していけばいいのだろうか?

私からの提案としては、「本人の合意とコミットメント」を主軸に適用していけばよいと思う。

勤務形態にエリア限定社員があるように、時間をベースに考えた賃金か成果をベースに考えた賃金かを本人に選択させるのである。当然、目標達成された場合の成果賃金は時間型より高く設定すべきである。まあこのあたりも企業の戦略的人事の1つであるが、コミットメントを高く評価しないと、みんなコミットメントしなくなってしまう。また、もう1つの試練になるのは、「評価の仕方」である。成果をどのように評価するか。我々はまだまだ下手くそである。KPI(Key Performance Indicator)を設定し、数値で評価できる項目は客観的に把握し、納得感のある評価を行っていかないと問題が残る。  レベルの低い国会でノロノロしているうちに、よその国はまた一歩生産性をあげていく。というより、生産性で差をつけられて困るのは、『フラット化する世界』にあるように国家ではなく個人なのだ!