私の経営していた外資ベンチャー企業にスーパーレディがやって来た。
海外法人が日本支社を紹介したことがきっかけとなり、スーパーレディAさんはやって来た。香港のコンサルティング会社に依頼されて、日本の市場調査を実施しているとのことである。
アプローチ方法は見習わなければならない。紹介されてきたとはいえ、営業活動のたぐいと思ったので、最初のメッセージは「お断りモード」。マーケティングイベントや営業活動は、秘書が匂いを嗅ぎ分けて断ってくれるのだが、今回は当社のマーケティング担当者もクリアして、面会することになった。
まず驚いたのは、日本語が流暢で対応が日本的であること。例えば、頭を下げる仕草など。これは日本社会におけるやり取りを肌身で体験していないと出てこない。なんと日本に関わって16年とのこと。
キャリアも素晴らしい。プリンストン大学を卒業して、特別研究員として東京大学大学院で日本の防衛問題について研究し、防衛関係に詳しい国会議員の秘書として実務経験も積んでいる。フルブライト奨学生であったようだ。その後ファイナンシャルタイムスの特派員として自動車、電機業界を担当し、日本のテレビのコメンテーターとしてレギュラー出演している。その後英国に渡り、同じくレポーターの仕事をした後に、中国の特派員になっている。
日本語はしっかりしているはずで、JETROが設立したSir Peter Parker Awardsというビジネス日本語スピーチコンテストで優勝している。そればかりか、現在は中国に関する書籍を執筆中で、Penguin出版社から刊行される予定とのこと。中国語もかなりのレベルらしい。National Committee on US-China Relations Young Leaderフォーラムのメンバーでもあった。
ヨーロッパには複数言語を話す人間も数多くいるし、インドにおいては一国の中ですら6つの言語を操らなければならなかったりする。言語だけの問題であれば、もっと多くのノン日本人が働いていてもいいと思う。
しかし日本という国は、非常に閉鎖的で、ノン日本人が働きにくい国であると思う。街は英語表記すら少ないし、アパート1つとっても入居しにくい。入局管理局は親切ではないし、なんといっても文化的な壁、例えば、国籍の異なる人が一緒に働くことが一般的には常態でない。Sabaのオフィスは、小さくても韓国、中国、インド国籍の人が働いていたし、ヨーロッパやアメリカ、オセアニアからも応援が来てくれる。前述の不便さは、彼らのビザの取得や個人的な相談を受けるに至って、私自身初めて気づかされることになった。
東京オリンピックを契機として、改善されることを願う。
今頃になって、政府は少子化対策などと言っているが、フランスは既に特別の補助金などで少子化対策を終え、目標を達成しているし、アメリカなどは、我々の知らないうちに3億人に迫る勢いである。10年前、日本はアメリカの半分の人口と思っていたが、気づくと日本の3倍になっている。これも戦略的な政治施策で、増えた1億人のうち5000万人は移民である。フランスも米国も戦略、戦術に長けている。政府の戦略性の無さが、労働環境のグローバル化や外国人招致にも表れている。
日本において「人」、「物」、「金」、「情報」の4つの中で、グローバル化が一番遅れている分野は「人」だと思う。
スーパーレディAさんはこのような国で、立派に活躍している。なんとも頼もしいではないか。海外で、同じように活躍できる日本人は、何人いるだろう?