「経営統合2」 – ゴルディアスの結び目 –

 経営統合、「過去のしがらみ」を断ち切る良いチャンスです。

 買収される企業や組織、かつてはエクセレント・カンパニー、多くの場合一世を風靡した時代があったことでしょう。買収されたり、経営統合の対象になるということは、価値がある証拠です。コア・コンピタンスがあれば、戦略を変えたり、プロセスを修正することによってV字回復する可能性があります。

 何度も書いているように、どのようなエクセレント・カンパニーでも市場適応できなければ、朽ち果てていきます。エクセレントから普通の会社に、普通の会社からダメダメ会社に。「エクセレントなやり方を変えていないのに?」と言っても、周囲の環境が変わっていきます。

 従業員は馬鹿ではありません。市場の変化を読み取り、自分達も変わらなければならないと認識しています。しかし、なぜ変われないのか?

 それが「過去のしがらみ」です。歴史は人を育て、プロセスをつくり、人や企業の関係を構築していきます。できあがったものには価値がありますが、時代とともに、その関係性は複雑になっていきます。BというプロセスはAというプロセスを前提としているので、Aが存在しなければBというプロセスは成り立ちません。そのAというプロセスを熟知する人はCという人なので、Cという人は不可欠になってきます。CさんにとってAというプロセスを提供することは自分の価値なので、積極的には他人へ伝授しません。BというプロセスにはDやEという他のプロセスも関係していたとしたら、Bの変更は容易ではありません。

 企業の歴史というものは、上のようなしがらみの連続です。至るところに、「過去のしがらみ」が積み上げられ、これがゴルディアスの結び目になっているのです。フリジア王になったゴルディアスが、誰にも解けない複雑な結び目を作って牛車を縛りつけました。これがゴルディアスの結び目ですが、近くにいる村人達は、頑張っても解くことができません。また、どうしてこのような結び目ができたのか、歴史があるとそう簡単には解明できません。同じ文化の中で育ってくると、結び目の解き方がわからなくなってきます。

 経営統合のタイミングはこの「過去のしがらみ」を解く瞬間です。一刀両断に、過去のプロセスを断ち切ってしまうアレクサンドロス3世なのです。しがらみを感じていては、迷いや固定観念が入り、プロセスを断ち切れません。大変な痛みを伴いますが、ゴルディアスの結び目を解く唯一の方法かもしれません。時には一刀両断、新しい目で変革が必要です。