「世界の中の日本」 – 中身の良さと露出 –

 5000人入る会場は満員。ある国際カンファレンス、日本人がキーノート・スピーカーに登場しました。

 国際競争力は衰え、後ろを見ればマレーシアが日本に続き、世界は中国とインドばかりを見ている今日この頃。ネイティブの発音ではないし、帰国子女という感じではありませんが、英語でのプレゼンテーションは光っていました。このような場合、下手でも、とにかく自分の言葉で伝えることが大切です。

 ビデオも製作し、最初は日本の伝統的な美を描いたものでした。京都と思われる背景のなかで、琴の音色と風景が日本の侘び寂びを想わせます。木工細工を組み合わせた襖が紹介され、日本の微細技術をイメージさせます。その後、対照的に半導体などのハイテク技術が紹介されていきます。伝統的な日本の良さと、優れた先進技術をアピールする格好のビデオでした。

 プレゼンテーションの中身は、その企業がヒューマン・セントリックな未来を目指しており、ICTがもっと人々の生活に役立つことを狙っているという内容でした。数名のキーノート・スピーカー・プレゼンターの中で、アジア人はこの日本人だけでしたが、来年は日本人以外のアジア人が大きく増えるんだろうなと感じました。

 会場の5000人の反応は、感動を素直に表して大拍手。国際社会の中でプレゼンスが下がっている日本をアピールしてくれました。

P.S. 
リハーサルは何度も繰り返したそうです。日本でも自社の体育館を借り切り、大道具を200万円で製作して入念な準備をしたとのこと。社内公用語が英語になった会社にびっくりしていてはいけません。良いものを作っているだけでは、グローバル競争からどんどん取り残されていきます。言語に代表されるいくつものハンデキャップは、なんとか準備で乗り越え、その企業が持つ良さをどんどん伝えていかなければなりません。
 自ら伝えない限り、「相手があうんの呼吸でわかってくれる」ことはありません。

「競争原理」 *勘違いの人達

 久しぶりに風邪をひきました。しかも米国への出張中でした。
咳が止まらず、急性気管支炎状態です。

 海外の医療費、高いですね。ご参考までに情報公開すると、初診料220$、検査料60$、薬代50$でした。クレジットカードの医療保険を適用できるかどうか、コンシェルジェ・デスクに確認してから予約しました。

 診察してもらったところは、知人に紹介してもらった日本人医師です。Medical Driveという名前がついた道路が通っていて、病院や研究所、薬剤薬局等、医療関係のオフィスや機関が集まった地域にそのクリニックはありました。マイケル・ポーターが書いていたクラスターというのは、このような地域を指すのだなあと実感しました。看板はでておらず、入り口はマンションのようです。

 日本人の受付嬢が出てきて、なんとなく一安心。ところが海外生活が長いせいか、相手に対する気遣いは表面的で、安心感は直ぐに消えうせました。診療後、薬局への道のりを説明してくれるのですが、相手の立場にたった説明がまったくできず、気づかずというお嬢様でした。何度か質問しましたが、期待どおりの返事は返ってこず、そのうち面倒になって尋ねるのをあきらめました。

 お医者さんの方は、普通の対応なのですが、なんとなく威張った口調が伝わってきて、どうも調子があいません。威厳を保つことを意識して、自然と対応が横柄になるのか、海外生活が長く日本人感覚が麻痺するのか、やたら偉そうです。

 診察時間は5分程度、検査も2分程度でした。紹介していただいた方には感謝するものの、患者側からすると、ほとんど選択肢のない状態でした。市場の需給が一致する「完全競争状態」とはまったく逆の「不完全競争状態」。日本では患者が寄り付かないのではないかと思われるクリニックでも、当地では関係ありません。日本人医師の少ない地域へ移住し、不完全競争状態に自らを置くというのも競争戦略の方法であると感じました。

 P.S. 
当初、「威張っているなあ」と思った医師も、例の受付嬢に対する気遣いには笑ってしまいました。コピーのやり方や書類の扱い、一生懸命フォローアップしています。世の中、やはり....

 写真のシロップ、医師は「麻薬に近い成分が入っているので、注意してください。」、また調剤薬局の人はIt makes you groggy.と言っていた(?と思われる)ので、服用時ドキドキしていましたが、何事もなくしっかり寝入るだけでした。